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第十二話 窃盗 ページ13

..


鉛色の空、豪雨が激しくなり雷が頻りに鳴る。

とある食品店の近くで少数の子供が息を潜め気を窺っていた。数秒後、硝子が割れ飛び店内で少年の声が響き渡った。




「金を出せっ!動くと撃つぞっっ」


店内に大きく響き渡る少年の声に客は視線を寄越すが、少年が一人だけだと知ると僅かに嘲笑した。が、少年が取り出した拳銃を見て数人が表情を顰めた。


「おいおい、どっから入ったくそ餓鬼。そんな弾も入ってない拳銃何て脅し道具にもならねえぜェ」


ハハハッ、カウンター越しに男が言うと店内に笑いが漏れた。

実際この付近では拳銃が捨ててあったりもするが高確率で弾無しだったり、不備があり使用できない物ばかりである。
つまり、この町付近の強盗や窃盗などが持つ拳銃はほぼ意味のない脅し道具なのである。

少年は俯き表情が見えなくなった。


「確かに、この拳銃には弾何て入っていないよ。ただ、俺たちは欲しい物を手に入れただけだ」


顔を上げた少年は何処かを一瞥し窺うと相槌を打ちカウンターへと走り出した。カウンターの男は突然の少年の行動に驚き身体を前に傾けレジと金庫を守ろうとしたが、少年の狙いは初めから金などではなかった。

同時に、店の奥から客の驚く声と数人の足音が響いた。両手に食料を持った数人の子供たちだった。カウンターの男がそれに気づき何かを取り出そうとするがその前に少年の拳が男の顔面へと届くのが先だった。


「餓鬼どもっっ、てめェらよくもやってくれたなァ!!」


罵声と共に出口へと逃げる子供達を睥睨した男はカウンターから拳銃を取り出し発砲した。

一発、二発、店内に銃声が響き渡る。照準は子供達へと向けられていたが使い慣れていないのか殆どが硝子などに当たり破片が周囲に飛び散った。

迅速な犯行だった。割れた硝子と店内の床や硝子片についた複数の血痕。その血痕は消して少ないとはいえず、ある可能性を示唆するものだった。


..

..Side


「やったぜ!こんだけ食料を奪えれば数日は持つな」

「うるさいね。大声出すと見つかるよ。」


両手に食料を抱え小走りに歩く子供達の足は硝子片の上を走ったことで所々切れ血が出ていた。足だけではなく腕や、顔に擦り傷などもできている者もいた。

だが、食料を盗みに建物の中の店へ入り無事に皆で逃げれるということはめったにない事なのである。皆、高揚感に包まれ塒にしている場所へと戻ると、一番後ろにいた子供が一人、倒れた。


その衣服は血で染まっていた。

第十三話 血痕→←第十一話 悪天候



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高校生(プロフ) - 皆様、現在日本に台風が接近していますが怪我の無いように気を付けてお過ごしください (2016年8月29日 7時) (レス) id: ba05ed8226 (このIDを非表示/違反報告)
高校生(プロフ) - フィンクスloveさん» ありがとうございます (2016年7月7日 12時) (レス) id: ba05ed8226 (このIDを非表示/違反報告)
フィンクスlove - とても面白くて大好きです!!更新頑張ってください!!(*´ `*) (2016年6月29日 18時) (レス) id: 8375edd26c (このIDを非表示/違反報告)
高校生(プロフ) - シロさん» ありがとうございます (2016年6月22日 23時) (レス) id: ba05ed8226 (このIDを非表示/違反報告)
シロ - 更新頑張って下さい!楽しみに待ってます! (2016年6月14日 20時) (レス) id: 6ce3e8c171 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高校生 | 作成日時:2015年11月22日 22時

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