【完】幼なじみとの攻防戦【梅原裕一郎】 (ページ37)

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36.耳、音。ページ37

いつも通りの朝。

しかし一つだけおかしな点があった。

音が何も聞こえない。

布団を叩いて音を出したつもりでも何も聞こえないのだ。

不安に思いすぐさま病院へ向かう。

すると、病名は｢突発性難聴｣と言われた。

通常ならば片耳のみに発症するが、ごく稀に両耳に発症する人もいるらしい。

耳が聞こえないのは声優として終わりだ。

社長に診断書の写真と活動休止の旨を伝えてそのままスマホの電源を切った。

私がちゃんとしないから。私がもっと危機感を持っていれば。私が…………

｢………！………！！｣

突然何者かに後ろから抱き締められた

『だ、誰……？』

やっとの思いで声を出す

振り向くと心配そうに俯く梅がいた

『……うめ…』

自分の声も聞こえないため発音が合っているかわからないまま声をかける

梅は驚いたような顔をして

｢耳、聞こえてる？｣

とスマホのメモアプリに書いて見せてきた

首を振ると梅は正面から抱きしめた

耳に空気がかかる。

おそらく何か喋っているのだろう。

でも何も聞こえない

怖いよ。

私の大好きな声、聞かせてよ。