2【酔々、宵に融ける】 ページ2
いや酒臭っ。やっぱり飲み会だったんじゃないか。
鼻をつくその臭いに堪らず立ち上がって別の席へ移ろうとするも、手首をパシッという音に似合わない強さで掴まれた。うげ、と思わず言ってしまったのは私別に悪くない。だってだってと脳内で言い訳しようとしたところでそいつは首を傾げてみせた。
「お姉さん、何で離れようとするん？俺と一緒は嫌なん？」
「──────は？」
うるうると潤んだ瞳で顔の良い男が私の手首をとって私を見上げていた。なにこの状況。え、はっ、ん？ん？？と疑問と困惑に頭が支配されていく。何も喋らない私に何を思ったのか、そいつは私の腰にぎゅっとしがみついた。腹を押さえられた訳でもないのにぐぇ、と蛙が潰れたような声が出た。
「行かんといてよぉ、おれ、ひとりは嫌やねん」
「えーっと、その、あの、最寄り駅はどちら、でしょうか」
「確か××銀行のある、方」
「反対方向じゃねえか」
頭を抱えたくなる。いや抱えた。
どうするんだよこの新人くん。これ終電だぞ。もう反対方向へ行く電車は無いぞ。
仕方ない、もうすぐ最寄り駅に着いてしまうし、彼にはこの駅とは別の場所で下ろして適当にタクシーでも捕まえて帰ってもらおう。それしかない、という私の考えを見透かしたかのように「俺今給料日前やからあんまり金持っとらんねん」と下の方から不安で潰れてしまいそうな声がした。ふざけんなてめえ。
だからと言ってこの酔っ払いの為に私がタクシー代を出すというのも何か嫌だ。大体私だって給料日前なのだ、ただでさえ金欠だというのに何故こいつの為に決して安くはない金を払わなければならないのか。払う道理なんて全くない。
そこで漸く、アナウンスが鳴った。私の最寄り駅だという事を告げる無機質なアナウンス。心は若干痛むがしょうがない。開いた扉を横目に彼に話し掛ける。
「すいません、私ここ最寄りなんで、離してもらえますか」
「嫌や」
「は？」
「行かんといて、俺から離れようとしないで」
「いや、その、それはちょっと困るんですけど」
そう言うときょとんとした顔で首を傾げられた。えぇ、あー、うーんとうら若き乙女に相応しくないような声を出して私が頭を捻っていると、彼が弾んだ声色でひとつ言った。
「ほんなら、お姉さんの部屋に今日泊めてや」
勿論一晩でええし、俺行く当てないし。
けらけら楽しそうに笑っているこの阿呆の提案を強く却下しきれなかった私に、果たして非はあるのだろうか。
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まも。 - 語彙力が半端ない…好きすぎる。 (3月16日 18時) (
レス) @page20 id: f3d61cfa83 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - やばい…osmnが色気爆発し過ぎてて死ぬ…更新楽しみにしてます！ (2023年2月15日 21時) (レス) @page32 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 更新再会っ！頑張ってください！ (2022年8月20日 14時) (レス) @page32 id: c39d7e026e (このIDを非表示/違反報告)
じばくとっこうたい - お久しぶりです！この作品本当に大好きです。osさんっっと悶えてました。新作もすごく面白かったです！これからも応援しています！ (2022年2月23日 18時) (レス) @page32 id: 8209a7a990 (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - 過去最高1位おめでとうございます！！前からでしたらすいません。気づいたので書き込ませていただきました。 (2021年9月12日 19時) (レス) id: 60a73795c6 (このIDを非表示/違反報告)
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