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明香里がバラエティ番組の収録をしている同時刻、陽晃はドラマの撮影に挑んでいた。
｢――はい、カット!! 楽くんも陽晃くんも、今のいい演技だったよ〜!!｣
｢ありがとうございます、監督。八乙女くんのおかげです｣
｢いや、陽晃さんのおかげですよ｣
｢あはは、二人とも謙遜しすぎだよ｣
撮影は順調に進み、一旦休憩に入る。
陽晃はパイプ椅子に座り、お茶を1口飲みため息をひとつ吐いた。
すると、その隣に楽も座り、同じようにお茶に口をつける。
陽晃はその様子を(本当に社長によく似ているな)と思いながら見ていると、ふと楽が口を開いた。
｢…今日の朝、親父が小鳥遊事務所の社長と話をしてたのを聞いたんです。知り合いみたいだったんですけど、なんか不穏な空気で｣
｢……気になるのかい?｣
｢……ちょっとだけ。明日の夜にでも小鳥遊事務所に行こうかなと。あいつらにお礼も言いたいですし｣
｢そうか、八乙女くんらしいね。……あ、監督が呼んでる。ごめんね、また後で｣
｢あ、はい｣
監督と話しながらも、陽晃は楽の話を思い出しては考え込む。
恐らく、八乙女社長と小鳥遊社長が話していた内容はあの曲に関してだろう。知り合いなのかどうか知らないが。
そして、IDOLiSH7のマネージャーは、うっかりなんでも喋ってしまいそうな人だ。もし彼が小鳥遊事務所に行けば。
自分が歌った曲が盗作であることを、知ってしまうかもしれない。
――天に連絡するか? でも、悪戯に不安を煽らない方がいいかもしれない。
――下手に口を出さない方がいい、かな。天からの連絡を待つか。
――天は多分、真っ先に僕に連絡を渡すだろうし。
｢陽晃くん、大丈夫かい?｣
ふと肩を叩かれ、陽晃は思考を中断する。
横を見ると、監督が心配そうに顔を覗き込んでいた。
｢…はい。すみません、ちょっと考え事を｣
｢いや、大丈夫だよ。忙しいもんな、さすが国民的アイドル!!｣
｢あはは、そんなんじゃないですよ｣
にこりと微笑みを浮かべながら、陽晃は何とかその場をやり過ごした。
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作者名：ニャルラトテップ | 作成日時：2018年10月4日 1時
