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堕落 / 白無常 ページ7

「ああ、また髪を乾かさずにほったらかしにして!ほら、タオル貸してください!」
「あっ、えぇ?お母さん?」
「違いますよ!あなたの恋人の謝必安です!」
「はえー……」

ぬっとどこからともなく私の部屋に現れた必安。きっと傘で飛んできたんだろうなぁ。一歩間違えたら別の人の部屋に出るからやめてほしい。

きっともう入浴を済ませたんだろう。いつもの三つ編みでは無く項あたりで緩く結ばれた髪がふわふわ揺れていた。
エッグチェアから手を引かれ、鏡台の前に座らせられる。「本は読んでていいですから」と言って肩に掛けていたタオルを取る必安。

やわやわと、頭を撫でるタオルの触感に読んでいた本を置き、鏡越しに彼の顔を眺める。
乾かしていない事にぷりぷりと可愛らしく怒っているのかと思ったが、実際の彼の表情は溶けそうな程柔らかい笑みで、その綺麗さに何故かゾッとした。

「必安、だらしない顔してる」
「え?…そうですか?」
「私が声かける前まで、すっごい綺麗だった」
「うーん、綺麗と言われるのは、喜んでいいのでしょうか?」
「誉め言葉だよ」
「なら嬉しいです」

ふわりと微笑んだ必安は鏡越しに合っていた視線を逸らして、また髪を拭く事に専念する。
段々と、とろけていく表情の変化は喜んでいいんですかね?ちょっと怖いのだけれど。
うとうととしてきて、耐え切れずにふらっと上体が後ろに倒れた。おっと、なんて言って肩を掴む必安を見上げる。アメジストの瞳がじっと見下ろしていた。

「もう少し耐えられますか?」
「ん、分かった」
「えらいですね」

完全に子ども扱いである。頭を優しく撫でられて、肩を押される。倒れないように維持してれば、どれくらい時間が経ったのだろう。
「終わりましたよ」と声を掛けられ閉じていた瞼を開ける。確かに髪は乾いている。ふわふわと私の動きと連動して揺れていた。

ん、と必安に両手を広げれば嬉しそうに微笑みながら私を抱きかかえ、ベッドに連れて行ってくれる。

「電気、消しますね」
「うん」

パチッと照明が消され、必安が隣に潜り込む。いつも冷たいその体を温める為にくっ付いた。断じて寂しいからとかではない。

「必安ってさぁ」
「はい」
「私のお世話、好きだよね」
「え、あ、んー…」

私の言葉に少し悩む必安。瞼を閉じて意識が微睡んだところで、

「Aさんが、私が居ないと生きていけなくなればいいと思っての行動ですよ」

眠気は吹っ飛んだ。

崩落 / 黒無常→←饒舌 / 納棺師



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設定タグ:identityV , 第五人格 , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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める@黒執事(プロフ) - リパ様えちえちだ…。鼻血が止まらん… (2019年11月18日 23時) (レス) id: 62ac38a52f (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - りんご?さん» 閲覧、コメントありがとうございます。マリー様良いですよね〜!下僕になりたい欲望をぶつけて書きました(´ω`*)気に入ってくださったようでなによりです! (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 玲さん» 閲覧、コメント、リクエストありがとうございます。楽しんでいただけているのなら書いている甲斐がありました!悲しさを表現できるかどうか分かりませんが、最善を尽くさせていただきます…!想像と違うものが出来上がっても何卒ご容赦を……!(′・ω・`*) (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
りんご?(プロフ) - 血の女王好きなので小説で書かれていて何度も読んでしまいました!!笑笑 (2019年10月3日 1時) (レス) id: a099461a17 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!リクエスト?があるのですが「脳に刻む&骨に刻む」の失恋バージョンを読んでみたいです。主人公ちゃんとイライが交際していることを知ったナワーブ君が見てみたい!(←ただの変態でごめんさい! (2019年9月24日 20時) (レス) id: 750579a695 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年1月5日 10時

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