饒舌 / 納棺師 ページ6
「カール!お前やるじゃねぇか!助かったぜ!」
「あ……はい」
「いいなぁ、僕も機械人形に化粧したら死者蘇生とか出来ないかなぁ」
「無理だろ!」
「ひっどーい!夢くらい見させてよ!」
今回のゲームはハンターが不調だったのか全員で脱出できた。
館への帰り道で、前の三人を見守っていると不意にカールくんがこちらを振り返る。
コミュ力の塊とも言ってもいい二人に両側を固められ、更にウィリアムくんには肩まで組まれて。彼には地獄だろう。
距離を慎重に測って、その人に合った近さで留まる私をカールくんは気に入ったらしく、こういう時に目で助けを訴える事が多い。名誉ですね。
「ほら、カールくんも疲れてるんだからゆっくり歩かせてあげてよ」
「Aもあんまり体力無いもんね!」
「酷く傷付きました」
「あっごめん!」
何度も揶揄われたから今更傷付くも何もないんだけどね。笑顔から一変して眉を八の字にして両手をあわせて謝るトレイシーちゃんに「冗談だよ」と笑い掛ければ、また太陽みたいな笑顔を見せてくれる。うん、やっぱり彼女には笑顔が似合う。
三人共歩くの早いよぉ。カールくん、一緒にゆっくり帰ろうよぉ。なんて子供みたいに駄々を捏ねれば、ウィリアムくんとトレイシーちゃんは大きく笑った後カールくんを解放した。
「Aの速度に合わせてたら日が暮れちまうかもなぁ?」
「酷いな、先に帰ってていいよ」
「じゃ、後はお若い二人に任せますかねぇ、爺さん」
「そうだなぁ、婆さん」
「誰が婆さんだって!?」
「トレイシーが先に言ったんだろぉ!?」
うがーっ!と怒ってウィリアムくんを追いかけて行くトレイシーちゃん。二人の背中はすっかり小さくなって見えなくなった。いやチェイスした後だっていうのに体力あり過ぎでしょ。
二人が居なくなった事によって一気に静かになった一本道。カールくんは私の横を歩いてくれていて、思わず口を開いた。
「別に無理して私と一緒に帰らなくていいからね」
「……一緒に帰りたいんです、無理、してないです」
じゃあ先行きますね、と返って来るとばかり思っていた私はこちらを見詰めるカールくんにぽかんと口をあけた。
……私はそこまで気に入られていたのか。
「Aさんは僕と帰るの、嫌ですか?」
「……名誉です」
「ふっ、名誉って、面白い人ですね」
優しく細まる目を見て、おや、と胸に手を当てる。
ハンターが近くに居るのだろうか。心音が聞こえた気がした。
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める@黒執事(プロフ) - リパ様えちえちだ…。鼻血が止まらん… (2019年11月18日 23時) (レス) id: 62ac38a52f (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - りんご?さん» 閲覧、コメントありがとうございます。マリー様良いですよね〜!下僕になりたい欲望をぶつけて書きました(´ω`*)気に入ってくださったようでなによりです! (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 玲さん» 閲覧、コメント、リクエストありがとうございます。楽しんでいただけているのなら書いている甲斐がありました!悲しさを表現できるかどうか分かりませんが、最善を尽くさせていただきます…!想像と違うものが出来上がっても何卒ご容赦を……!(′・ω・`*) (2019年10月5日 23時) (レス) id: b9652ac74b (このIDを非表示/違反報告)
りんご?(プロフ) - 血の女王好きなので小説で書かれていて何度も読んでしまいました!!笑笑 (2019年10月3日 1時) (レス) id: a099461a17 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!リクエスト?があるのですが「脳に刻む&骨に刻む」の失恋バージョンを読んでみたいです。主人公ちゃんとイライが交際していることを知ったナワーブ君が見てみたい!(←ただの変態でごめんさい! (2019年9月24日 20時) (レス) id: 750579a695 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遊歩 x他1人 | 作成日時:2019年1月5日 10時