7 ページ7
3
あれから目を覚ました薮と顔を合わせた時
薮は俺の足元に崩れ落ちて泣いた。
まだしっかり立つことも動かくこともできない身体で俺のベッドの脇まで来て、そして、俺が声を失ったことを光から告げられた瞬間、糸が切れたように泣き喚いた。
俺の名前と“ごめん”を繰り返しながら。
＿＿＿どうして謝るの
どうして薮が謝るの？
どうして“俺のせい”って泣くの？
あの駆け引きを知ってるのは俺だけのはずでしょ？
俺は薮のそんな声が聞きたかったんじゃない。
お願い、薮。
笑ってよ。
＿＿＿＿＿＿＿
薮は完全に体が治るまで活動休止になった。
俺も、もう喋ることができないからTVへの出演は全て断ることになった。
もう事務所を辞めようと社長に報告に行ったけど、雑誌の撮影に問題は無いし、インタビューも筆談でできるだろって、なんかめちゃくちゃだけど
なんとかJUMPに残ることが出来た。
でも、やっぱり疑問や批判がネットや世間を駆け巡って行った。
＞歌えず、テレビにも出れず、JUMPにいる意味もなければむしろお荷物。
＞邪魔。
＞JUMPの足を引っ張ってる。
俺だって…そう思ってるよ…。
「薮明日退院だって！！」
楽屋で雑誌のインタビュー中、光が嬉しそうにスマホを掲げた。
「ほんと！？」
「よかったー！」
その報告に俺もインタビューそっちのけで隣にいた知念に飛びついて一緒に喜んだ。
「あれ…伊野ちゃん痩せた？」
俺に思い切り抱きついていた知念が少し体を離し唐突に言うもんだから少し戸惑った。
仕事のない日はいつも薮の病室に入り浸っていて、つい昨日、同じことを薮に言われたばっかりだった。
声を失って、たくさんの人に迷惑をかけた。
歌えないし喋れない。
今まで通りにいかず、何も知らない人達に叩かれて
悔しくて悲しくて傷ついて、ストレスが溜まりご飯に手がつかない日が続いていた。
これでいいと自分に言い聞かせる日々。
だって、こうしなかったら薮がいなくなっていたんだから。
俺はそっちの方が耐えられない。
だったら、今のこの状況なんて軽いもんだ。
「ちゃんと食べてるの？」
「“食べてるよ”」
もし、俺が
「本当？書くだけだからって嘘言ってない？」
薮の命と引き換えに失ったはずの 声 を取り戻したとしたら
「“本当だよ笑”」
それって
「…伊野ちゃん？」
…それって
「……ぇ。」
「！！今、声っ！！」
「ちね…」
どんな時だと思う？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふぉん。(プロフ) - 美樹さん» 気づいていませんでした！教えていただきありがとうございます。今後気をつけます！ (2018年3月8日 1時) (
レス) id: 3c8233bff3 (このIDを非表示/違反報告)
美樹(プロフ) - 実在する人物が登場しますので、オリジナルフラグを外して頂けませんか？このままでは違反報告の対象ですよ。 (2018年3月8日 1時) (レス) id: e536c968fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふぉん。 | 作成日時：2018年3月8日 0時
