海の王者人魚の体に流れる血 (ページ10)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:12,871 hit

海の中ページ10

波の音だけが静かに響き渡る。

『コラソン…
　貴方に私は殺せない』
そう言ってAは後ろに体を倒し、海に落ちた。

ボチャッーン！！

高らかに響く海に落ちる音。
コラソンは慌てて海に目を向けると、尾びれを最後に彼女の姿は消えていた。

「くそっ」
自分もついに身をさめかと溜息をつき、こめかみに指を添えた。

「ハァ」
溜息だけが静かに響き渡った。

・

・

ゴポッ

『…』
Aは静かな海の中、己の体を抱きしめていた。

口から漏れる小さな空砲を手で潰し、目を閉じた。

そしてゆっくりと目を開け、月明かりで照らされる波をかき分けて泳いで船について行く。

キラキラと輝く海の中、尾びれを上下に揺らし、目を開けると。

ポチャン

『？』
落ちてきた小さなソレに近づき、手のひらに落ちてくるまで待った。

半分に折られた、小さな吸い殻

Aはソレを見て、小さくほくそ笑んだ。

きっと彼は今甲板で頭を抱えて悩んでいることだろう。

それとも私が海から上がってくるのを待っているのだろか。

なにはともあれ、困っていることは確実だった。

私は吸い殻を手放し、少し進んだ船の横に体を付ける。

顔を覗かして、見上げたが船は私よりも大きく。
帆はおろか甲板の様子なんて見えたものじゃない。

少し離れれば、見えるだろうが異変に気付けばドフィが起きてしまう。

距離があり過ぎると、肩のマークが火傷のように痛みだす。

私達は一心同体。
この肩の印は離れても、また私たちを一つに戻してくれる。

私はネックレスに唇を落とし、ゆらりゆらりと泳ぎながら船を追いかけた。