海の王者人魚の体に流れる血 (ページ8)

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コラソンページ8

彼の寝息が隣から聞こえてくる。

上半身裸で身をよじる彼の頬を撫で、ベットから立ち上がった。
甲板に出ると、とっぷりと日は暮れ月が上空で光り輝いている。

波の音が心地よくて、私はぴょんぴょんと跳ねて、器用に甲板の端まで歩いて行った。

尾びれを折り縁に腰かける。
こんな日はなんとも歌を歌いたくなる。

そんな気持ちを押さえて髪を撫でつけた。

そういえば‥夕飯食べ損ねちゃった。

あの後彼が眠り、私も少し眠って、気づいたらもう夜更け。
お腹を撫でて、海を覗き込む。

カタッ

『…海の中の魚たちも寝静まってる
　本当に静かな夜ね』
海から目を離し、月を見上げ私はポツリと呟いた。

その視線を横にスライドさせ、音を発生させた本人に目を向ける。

『何の用？
　コラソン』

「…」

神妙な顔つきをした彼を見れば、スッと目を離された。

コラソンは黙って、私に黒いコートを掛ける。

「(目のやり場に困る)」

私の普段の格好は上半身裸だ。
私は汚い字を見つめ、プッと噴き出して笑った。

『ふふっ
　そうね。
　胸に貝でもつけようかしら？』
コートで胸を隠し、月を見上げる。

しばらくの沈黙の後、彼の手がスッと私の前に…

私はその手に握られているものを見つめ、口角を上げた。

『あら、あなたもなの？』
その手にはパンが握られていた。

「…」
頬を少し赤らめ、ポリポリとばつが悪そうにかくコラソン
私はそれを受け取り、少し齧った。

『毎日パンじゃあね』
パンを置くと、彼は焦り手をワタワタとさせて、ごめんと頭を下げた。

また沈黙が私たちを襲う。

でも私はそれを気まずいとは思っていなくて、逆に心地よかった。
どうしてだろう…ドフィの血を引いているからかな？

「(その変なこと聞いていいか？)」

『あら？
　珍しいわね』
長話をしようとしない彼が珍しいお誘いだった。
私もきっと魔が差した。

「(あいつのどこがいいんだ？)」
気分がいいから上がっていた口角は下がり、瞬時に場が凍り付く。

あいつというのはドフィの事だろう。
でもどうしてそんなことを聞くのだろう？

私はここで彼に違和感を感じた。

勘のいい私。このファミリー全員ドフィ一番の人間ばかりなのに…

「(やっぱなかったことにしてくれ)」
紙をグシャッと潰し、タバコに火をつける彼

私はタバコを握りしめ消した。

『本当に変な夜ね。
　だから夜のせいにしましょう。
　今夜付き合ってくれる？』

そういう私の足は人の足に変化していた。