別れてからわかること。【角名倫太郎】

＃10 ページ10

水筒を忘れた。









『飲み物買ってくるわ』




「「いってらー」」









一緒にお弁当を食べている友人の声を聞いてから教室を出た。









1人になった途端、どっと体の力が抜けた。









なるべく自然を意識しつつ









周りに神経を尖らせてしまいながら廊下を歩く。









倫「A？」









倫太郎の声だとすぐに分かった。









安心する声なのにびくっと肩がはねた。









振り向くと倫太郎と目が会いそうになって慌てて目をそらす。








倫「ねぇ、別れよってどういう意味？」







『.....その、まんまの意味だよ。』








なんとか絞り出した声は情けなく震えた。









倫「そのまんまって...。俺、なんかAに悪いことした？なんか嫌なことした？」








してない_____









その言葉が喉の奥まで出てきて突っかかった。








してないよ。









してるわけない。









倫太郎はとても悲しそうな顔をしていた。









違う。





そんな顔させたかった訳じゃない。









傷つけないようにとした行為が倫太郎を傷つけてしまったんだ。









涙が出そうになるのを必死で堪える。









うちが泣いていいわけない。









泣く資格なんてあるわけない。









自分で選んだんだ。









さっき侑と目が合って、すぐ隣に座っていて怖かった。









うちはもう普通じゃない。









倫太郎のことももう今までの距離では居られない。








そう思ったから別れよっていったんやろ自分。









『倫太郎とはもう付き合えない。』









きゅっ、と手汗が滲んでいる手を握った。









これだけは、ちゃんと目を見て言わなきゃいけない。









うちは涙がこぼれないように顔に力を入れながらだいすきな倫太郎の目を真っ直ぐに見た。









『.....ごめんね。』









ごめんね。









うちが弱くて








弱くて









逃げて









傷つけて









倫太郎が大切にしてくれたうちの体を守れなくて









だいすきなのに









恐怖に負けて









ごめんね。

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