別れてからわかること。【角名倫太郎】

＃29 ページ29

倫太郎side

思わず、というのが1番遠くて近い。




意識的にかもしれないしそうじゃないとも言いきれない。







それでも目の前で泣いているAの姿をみて思わず抱きしめてしまった。






Aはこころなしか少し痩せてるような気がした。








.......なんとなく、わかる。







いま目の前にいるAは俺の知らないAだ。







とんとん、とやさしく背中を叩いてあげる。





.....あーどうすっかなこれ...。









場違いにも程があるのはわかってる。









それでも久しぶりに感じたAが嬉しくて俺の顔は赤くなる。









どれくらいの時間が経っただろう。







ゆっくりとAは俺の胸から顔を上げた。






『.....だいぶ、落ち着いた。ありがと。』






倫「どういたしまして。」




気まずい空気が流れる。









俺の知らないA。









それを知りたいと思うのに俺が突っ込んじゃ行けない気がしてしまう。








しばらく無言の見つめ合いがつづくと突然勢いのいい足音が聞こえてきた。









侑「あ！！Aこんなとこにおっ.....た.....って角名ぁ！？」






倫「侑うるさいんだけど。」









侑「え？ちょ、え？」





侑が来てくれたことにほっとしてるのか残念なのかよく分からない複雑な気持ちになる。









侑「.....ていうかこれA大丈夫なん？」





『...大丈夫だけど、』







侑の姿を見た途端、Aはまた泣きそうな顔になってしまった。









まるで怒られる前の小さい子供みたいに見えた。

＃30→←＃28

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す