別れてからわかること。【角名倫太郎】

＃12 ページ12

Aside

「最近、角名くん元気なくないー？」

「あー、ね。部活でも普段しないようなミスしとるしね。心配〜。」






通り過ぎた女子生徒の声が聞こえてしまった。









.....元気ないんだ。









思ってからハッとする。








うちにはもう関係の無い話だ。









うちはもう倫太郎の人生の部外者になったのだ。









確実にうちは普通じゃなくなっている。









相変わらず夜はせいぜい寝れて1時間









昨日の夜は寝ようと目を瞑るとあの男の手の感触を思い出してしまってトイレで2回吐いた。









誰かと一緒にいるのが辛いけれど1人で家の外を歩くことが怖くて難しいから朝の登校以外は女の子と一緒にいる。









そして何よりも






男がこわい。









侑「Aちょっと宿題写させて！」







『ええで。1問100円な。』









以前のうちなら言うだろうという言葉を並べて恐怖心を悟られないように神経を尖らせる。









侑「おーきにー。」




そう言ってうちの方に近づいて侑は腕を伸ばしうちの机の上にのっているノートをとった。









『っ！』









やだ、という言葉が出かかってしまった。









触れてしまいそうな距離にいる。









近い近い近い。






嫌だ。






こわい。





相手は怖くないのに。






侑は手を出さないと分かっていてもこわい。









『あつむ...自分の席で、見て。』



なんとか声を絞り出す。









侑「ん？あー、おん。」






そう言って侑はうちのノートを自分の席まで持っていった。





どくどくどく







心臓の音が聞こえる。









呼吸が不規則になる。









頭ががんがんする。









ここ１ヶ月以上ずっとよく眠れていないからだろう。









侑「A？顔色悪うない？」







『だいじょうぶ...。』









大丈夫...。









大丈夫。









自分に言い聞かせて無理やり口角をあげた。

＃13→←＃11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す