ストレス(潤)1 ページ25
潤サイド
朝外来を始めようと診察室に入りPCを立ち上げると首からぶらさげている院内PHSが鳴った。
こんな朝から誰だ？と思ってスクリーンを見ると医局の番号。
「もしもし？風山ですが。」
何だろうと思い少し緊張する。
おはよう、聞こえてきたのは医局長の声だった。
昼休みに医局のスタッフルームまで来いと...なんだろう。
俺何かミスしたか？
不安なまま午前の外来診察をを終え深呼吸を数回して医局に向かう。
ノックすると入れと声が聞こえてきた。
「失礼します。」
ドアを開け足を踏み入れ一礼する。
Dr「時間もったいないから単刀直入に言うが何でこんなに検査のオーダー出してる？」
一瞬理解できなくて返事に困っていると
Dr「先月と今月、お前がオーダーしたMRIにCT、エコー、採血、どれもこれも他のドクターよりも群を抜いて多い。何でだ？」
「それは、必要と判断したからで...」
Dr「ちゃんと患者さんの話聞いて診察すればこんなオーダーの数にならないと思うが。結果9割以上異常なしだぞ。」
確かにAの一件以来、自信がないというか、自分の診断が正しことを証明したい、という思いで検査オーダーしてる。なんとなく自覚はあった。だって見逃したら怖いもん。
Dr「無駄に検査オーダーしないで自分の知識と手技を頼るようにしなさい。患者さんの経済的負担もあるし造影剤使う検査だったら体の負担もあるし、大げさかもしれないけど国の予算だって無駄に使ってることになるんだぞ。気をつけろ。」
「でも検査で異常なしとわかったら患者さんも安心されますし。」
Dr「なんでもかんでもテクノロジーに頼るな。ちゃんと話聞いて身体診たらだいたいの診断はつくはずだろ？今までそうやってきたのにどうした？」
どうした？って言われても。万全を期すためにはやっぱり検査に頼りたい。
「それは...」
Dr「妹さんのことは聞いたよ。大学病院でのオペ待ちだって。ただそのことと普段の診療をごっちゃにするな。機械に頼らなくてもお前は良い腕持ってるんだから。」
Aのこと話に出された途端、胃がわしづかみされてるような感覚になり、口の中にすっぱいものがものが込み上げてきた。でもここで倒れるわけにはいかない。Aのことで自信なくしてるとか精神的に参ってるとかそんな風に思われたくない。
Dr「昼飯食う時間なくなるからもう行け。もっと自分の腕を信じろよ。」
吐き気が一気に込み上げてきたので急いで医局を出てトイレに駆け込む。
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作者名：ルパン
| 作成日時：2016年2月23日 20時
