喘息(和)3 ページ15
潤サイド
「ただいまぁ。」
玄関で小さい声でつぶやく。
風呂場からは翔兄の歌声が聞こえてくる。どんだけ大きな声で歌ってるんだか...
腕時計に目を落とすと11時半。良かった、日付が変わる前に帰宅できて。
智兄は当直でいないから家にいるは、大声で風呂場で歌っている翔兄と和兄と雅兄か。
あー疲れたと思いながら階段をゆっくり上っていると和兄の部屋からゲホゲホと咳の音が聞こえてきた。
風邪でも引いたのかな。夏風邪って長引くから酷くならないと良いけど。
部屋の前を通り過ぎて自分の部屋に入ってもまだ咳き込んでいる。
さすがにちょっと心配になりサッと服だけ着替えて和兄の部屋をノックする。
「大丈夫？だいぶ咳出てるみたいだけど？」
もし寝てるんだったら起こしたら悪いなと思って返事を待ってみる。
ゲホゲホ、ゲホゲホと止まることのない咳にさすがに心配になってドアを開ける。
「ちょ、ちょっと和兄、大丈夫？」
ベッドに浅く腰掛けて両手をついて肩を上下させ苦しそうにしている。
明らかに喘息の発作だよ。
すぐにそばに寄って前にしゃがみ顔色を見て手首に触れて脈の確認。
「吸入は？」
聞きながら見渡すとベッド横のテーブルにおいてあった。
てことは、今日ずっと調子悪くて吸入してたのかな。
「吸ってこの状態？」
冷や汗もかいてるし脈も速いし、聴診器を使わなくてもヒューーヒューーと呼吸のたびに苦しそうな音が聞こえてくる。
すぐに応援呼んだほうが良さそうだなと思って、
「ちょっとだけ待っててね。翔兄呼んでくるから。吸入しておく？」
聞いても首を横に振るだけ。
もう用量オーバーしちゃうってことなのかな。
急いで翔兄呼んでこなくちゃと思い立ち上がると服の裾をぎゅーーっと握り締められた。
涙目で俺の顔をじーっと見て首を横に振り続ける。
1人にしないでってことか。
それじゃぁと思いよいしょっと和兄を抱きあげる。
「翔兄のとこ一緒に行こうね。すぐに楽にしてくれるからもうちょっと頑張って。」
背中に手を回すと呼吸のたびに重たい苦しそうな感触が伝わってくる。
段差に気をつけながら階段を下りて風呂場の前で止まり翔兄の歌声に負けないくらい大声を出す。
「すぐに出てきてーっ！和兄が喘息の発作！」
翔「は？え？何？」
「ぜーーんーーそーーくーーー！！」
翔「まじ？わかった、すぐ行くからソファで待ってて。」
大慌てでシャワーをしてる音が聞こえてくる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 677人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ルパン
| 作成日時：2014年7月7日 21時
