好き？ ページ35
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「ねぇ、唇にキスしていい？」
何を言うのかと思えば、無邪気にそんなことを言ってきた。
「...だめに決まってるでしょ？」
「じゃあ、どこならいいの？」
「はぁ？」
クエスチョンマークが連続で続く。
「もうこんなことやめようよ。手が痛い...」
サクライのことを思い出して、助けてほしくて、また涙が込み上げてきた。
「そんなにオイラが嫌い？」
「嫌いじゃないけど...でもこんなのやだ」
「もう高3でしょ？それなのにしたことないんでしょ？」
「...時期なんて人それぞれじゃん」
サクライなら絶対に、泥酔していたとしてもこんな真似しない。
でも彼は今、違う女とこういうことしてるんだろうな...。
とうとう一粒だけ涙が零れた。
それをちゅっと音を立てて吸い取る。
「オイラさぁ、最近つまらない女ばかりでウンザリしてるんだよね。だから、Aちゃんなら優しくするよ？」
冷酷な言葉にますます涙が出てくる。
悪魔だ。この男は天使の仮面を被った悪魔だ。
「泣かないでよ。泣いたって翔ちゃんは戻ってこないからね？」
「ばかぁ！オオノのばかばかばかぁ！」
必死で身をよじると、不意を衝かれたオオノが手を緩めた。
その瞬間を見逃さずに腕を引っこ抜き、その勢いで横っ面をひっぱたく。
「いった！ひどいよ、本気で叩くことないじゃん」
「ひどいのはそっちよ！サクライに言いつけてやるから」
「だからぁ、翔ちゃんは戻ってこな＿＿」
「私から押しかけてやるわよ！」
室内がしんと静まり返る。
「...そのマンション、どこ」
「本気で言ってる？Aちゃんは熱があるんだ。無理したら...」
「今さら遅い。アンタが私の熱を上げたの」
涙をごしごしと拭いてキッと睨み付けてやった。
「...潤くんのアパート覚えてる？その向かいの5軒右隣にマンションがあるから」
遠っ...。車で30分以上かかったじゃん。
でも今さら引けない。単純な道だから大体覚えてるし大丈夫。
「行ってやるわよ。お嬢様の意地にかけてね！」
びしっと決めてやると、手を叩いて喜ばれた。
「かっくいー！さっすが松原のお嬢様！」
腹が立つ！何がなんでも探し出してやる。
「ねえ、ひとつ、聞いてもいい？」
玄関へ向かおうとしたら呼び止められた。
「Aちゃんはね、翔ちゃんが好きなの？」
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作者名：黄昏水晶 | 作成日時：2014年6月29日 9時
