3.Desire ページ6
「……あのさ、今までハウスを出ていった兄弟たち、誰一人手紙も寄越しゃしないわよね！ きっと、ハウスのことなんて忘れちゃうくらい、毎日楽しいことでいっぱいなのよ！ あー！ 私も早く外へ出たい！」
「出たら何したい？」
「決まってるじゃない、服よ、服！ 今はこれしかないんだもん！」
「俺は美味いもん食いたいなー」
『有名なスイーツのお店とか、カフェとか行きたいなぁ』
「可愛い女の子とデートとか？」
「僕、汽車が見たい！」
と、みんな口々に“外に出たらやりたいこと”を言い始めた。私も前世での趣味だったことを上げてみた。ハウスはつまらない訳じゃないんだけど、外を知っている身からすると、やっぱり不自由も多い。
「ノーマンは？」
「僕は、色んな場所に行って、見たことないものを見てみたいな」
「いいね！ レイは？」
「外に出たら……まず生きていかなきゃな」
「重いよ、レイ。エマは？」
「私は……別に出て行きたくない。だって、今幸せだし！」
エマは、そう言って笑った。こんなエマが真実を知ってしまうのも、あと数時間後だ。
3人と仲が良くて、
*****
夜になり、コニーをみんなで見送る時間になった。コニーは特別な服を着て、みんなと“将来”を語っている。でも、コニーはその“将来”を見ることは叶わない。
「私、ハウスを出てもがんばる……。ママが作ってくれたリトルバーニーがいるもん。私、トロいし、みんなみたいにユウシュウじゃなかったけど……大人になったらママみたいな“お母さん”になりたいんだ」
「コニー……元気でね！」
「最後まで幸せに」と言うのなら、出荷も眠っている間にすれば良いのに。最後の最後で、鬼を見て絶望して死ぬなんて、残酷だ。
『ばいばい、コニー』
Desire ―願い―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
