39.Conclusion ページ42
「二重人格ではないって言い切ってたけどさ、例えば……普通、ストレス体験の記憶を
『……それは、都合がいい考えなんじゃないの？』
「さっき俺が挙げたのは、変化があったと思ったことだ。けど、全く違うとも思ってない。……大体、存在から別人になったら、ママとかなら気付くだろ」
『た、確かに……？』
まず転生の現象のことがよくわからないが、それまで幸せに過ごしていたのに、突然その環境についての残酷な真実や、前の人生を思い出し──そして、自分の死も思い出したとしたら、それは大きなストレスと言えるだろう。それを解離性同一性障害のメカニズムに当てはめると、“前世の私”と“今世のA”の魂のようなものが地続きだったとしても、こうなる可能性もある……ってことだろうか。
やっぱ、レイは頭良いなぁ。私が辿り着いて立ち止まってた結論をあっという間に理解して、その先まで行っちゃった。
そっか。今の記憶と前の記憶、お互いがお互いを受け入れられなかっただけの話、だったのかな。それによく考えると、乗り移っただけなら、日本人だった私がいきなり英語を理解できるのもおかしい気がする。
すると、レイが呟いた。
「“約束のネバーランド”か……。ネバーランドって言うと、大人になる前に出荷されるこの農園を指してるのか？ 約束っていうのは──」
さっきの説明で教えた、タイトルについて考えているみたいだ。
『えっ、いきなりどうしたの？』
「タイトルって言うくらいだから、農園の外の世界についてのヒントもありそうだろ」
『適応はや……』
そのとき、扉がノックされた。聞くと、フィルに時間を教えてくれるよう頼んでいたらしい。ママの目を盗んで話ができる時間は終わりだった。
でも、これだけは言っておきたい。
『……残りは、レイの誕生日前夜、食堂でしよう。……大丈夫。脱獄は成功するよ。レイも、生きて外に出られるよ』
「…………」
『全部、知ってる通りだから。大丈夫』
ノーマンの出荷も含めて、全部。
「分かったよ。……くそ、時間がねぇな」
レイもまだ話したいことがあるみたいだったけど、長話ししていることがママに伝わるのはマズい。そして、レイは急いで医務室を立ち去った。
Conclusion ―結論―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
