38.Indication ページ41
「いや、でも、前世って……。先を予測したことをそう感じたってだけじゃ──」
『レイは、このハウスで死ぬつもりだよね。自分に火をつけて、他のみんなを逃がすつもり。それから──』
このことを、信じてもらうためだけに、言っていいのかな。……でも。もし私が消えるのなら。最後に……信じて欲しい……。
『レイは、ママの実子なんでしょう？ これは、レイの記憶か、本部の記録がなければ、本人たちにさえわからないこと。……だよね？』
そして、レイはしばらく考え込んでいた。
「……本当にそういう、ことかよ。……俺がスパイだってバレたのも、小さい頃のAの先読み能力が戻ってきたのかと思った。でも違ったんだな……？」
『うん。レイが真実を確信して内通するよりも前から、レイがスパイをする未来を知ってた、みたいな』
一応納得はしてくれたらしいが、まだ信じきれてはいないみたいだ。
それと、今話していた中でわかったが、レイはその特殊な事情も相まって、“本当のA”についての記憶も結構あるらしい。見た目は同じでも、ある日突然入れ替わった私は、そんなレイの目にはどう映るのだろう。
『……でも、“本当のA”は、ちゃんと戻ってくるよ』
「え……」
『少し前から、“本当のA”が出てくることが多くなってた。でも最近はその切り替わりも不安定になってきて、なんか、比率が変わってる感じがするんだよね。まあ、感覚的な話なんだけど……』
もし、今まで私が勝手に“本当のA”の体を動かしてただけなら、それは私が悪いのかな。
『
「お前さ、昔から俺によくくっついてたんだよ。理由聞いたら『レイはれいせいだから、おちつく』だってさ。ママとか姉とかにも、いつもしがみついてた」
『うん……？』
突然始まった話題の意図が読めず、困惑する。
「今思えば、お前も天才の部類だったんだろうな。チェスとかしてても、予測能力がやばかった。で、ある時『怖いのが分かるのも、分からないのも怖い』って言ってたんだよ。事前に予測した危険が迫ったり、逆にそれが予測できなくて、未知であることも怖かったってことだろうな」
『……それ、“本当のA”の話だよね？ でも──』
「その、“本当のA”って捉え方が違うんじゃねって話だよ」
Indication ―指摘―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
