36.Guess ページ39
──No side──
「A」
『……？』
Aが医務室に逃げ込んだ後の自由時間。レイは、イザベラの監視の隙を見て、Aの様子を見に来ていた。実際のところ、イザベラはレイの監視を怠ったわけではない。しかしAは本当に熱を出して寝込んでいるため、その点において警戒を強めてはいなかったというわけだ。
レイは他の子供たちと同じくAを心配していたが、加えて1つ気になることがあった。それを確かめるためにここに来たが、思ったよりもAは高熱で、会話をするのは苦しそうだった。そのため、出直そうとベッドから離れようとしたが──
『レイ……』
そのとき、Aは半ば無意識に、レイの服のすそをつまんだ。
「やっぱり、そうなのか……？」
そして、レイはそっとその手を外して、医務室を立ち去った。
*****
──Side A──
医務室に行って体温計を使ったら本当に熱があって、寝て起きたらもう外は暗くなっていた。
((今、何時……？))
そう思って顔を傾けると、そこにはレイが座っていた。
『……！？ レイ！？ え、ここに居ていいの……？』
「短時間だけど、今ならママはここには来ない。話をするだけなら大丈夫だ」
『話……？』
突然どうしたんだろう。ママの目を気にするってことはそういう話なんだろうけど、この時期に急を要する内容って……？ 私はひとまずレイに先を促したが、続いてレイの口から出た言葉は唐突に思えるものだった。
「『解離性同一性障害』って、知ってる？」
『えっと、知ってるけど……』
「解離性同一性障害」。俗にいう多重人格になってしまった状態のことだ。辛い経験などの何らかの強いストレスを体験したときに自分の心を守るため、自分の記憶の一部をもう1つの人格として「解離」させてしまう、という原理らしい。
『……あっ』
レイは、気が付いたんだ。“私”のときと“本当のA”のときとの違和感に……。
「その反応だと、俺が何言いたいか分かってそうだな。……昔、Aが階段から落ちたの覚えてるか？」
『ううん』
「5歳の時だった。頭も打ってたし、ママもすごい慌ててた」
『あー……。そりゃそうだろうねぇ』
“私”が目覚める前から“本当のA”は優秀だったらしいし、そんな将来有望な
「んで、今思えばその数日後から……お前の性格変わったんだよ」
Guess ―推測―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
