35.Strange ページ38
『…………』
「──どうしたの？」
前で遊んでいたらしいマーニャが、私を心配していた。
((……まただ))
ノーマンの出荷から数週間。“諦めたフリ”のため、私たちはほとんど会話をしていなかった──まぁそれがなくても、あれ以来レイとは話しにくいままなんだけど。でも正直、最近の私は別のことで頭がいっぱいだった。
このように、“気が付いたら長時間経っている”ということが頻繁に起こるようになった。それは、もしかしたら“本当のA”が動いている間なのかもしれない。でも、今まであった交代の感覚も、その間の意識も、今はなくなっていた。
((怖い……))
*****
「じゃあテストを始めましょう」
今日のテストが始まった。しかし、いつもの感覚はやってこない。
((え、なんで……))
と、とりあえず始まっちゃったし、解かないと……。
結局、その日のテストは全て私が解くことになった。前は中3の勉強まではしたし、今まで“本当のA”が解く様子も見てきた。だからそれなりにはできたと思うが、
*****
ブザーが鳴り、教室の明かりがつく。最近はやっぱり、突然に記憶が飛んだり、テストで入れ替われなかったりということが続いていた。
((私の方がイレギュラーなのはわかってる。でも……消えるのは、怖い……))
「……A。このところ、あまり成績が良くないわね」
結果を渡しながら、ママが言った。レイやエマ──そしてノーマンは、どんなに追い詰められていても、計画について悩んでいても、好成績をキープしていた。だから、こうして私のテストの出来が悪くなっているのは、ママから見るとかなり異常なのかもしれない。でも、私は──
『……
ずっと優秀だったのは私じゃない。みんなの中の「A」は私じゃない。
『気付かないのに。知らないのに、「優秀な
……頭が熱い。
「ちょっと……大丈夫？」
肩に手を置かれ、覗き込まれて、ハッとした。
ママは本気で心配して──いるような顔をして──いて、周りのみんなも私のことを見ている。
((この先の展開を変えるようなことをしたらダメだ))
『……ごめんなさい。なんかまた熱っぽいから、医務室行くね』
そう言って、私は教室を離れた。
Strange ―異変―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
