32.Control ページ35
──A side──
ずっと、“わたしじゃないわたし”がいるのは、なんとなくわかってた。その“わたし”はあんまりテストができなくて、わたしは勉強は好きだったから、テストのときはわたしが動いていた。でも時間の感覚は曖昧で、“わたし”が体験したことはだいたいわかるし暇ではなくて、特に不自由は感じていなかった。
でもあの日、門であの光景を見てしまった。わたしが
みんなは……。
((ノーマンを死なせたくない……))
しかしその時、近くで足音が聞こえた。ママだ、と思った。
『ノーマン、機械しまって』
「うん」
2人も警戒しているようで、機械はポケットに入れ、残りの荷物は草が茂っている方へ投げ捨てた。
そして、ママは姿を現した。
「ママ……どうしたの？」
「10年一緒に暮らしたけれど、お芝居抜きでお話するのはこれが初めてね。初めまして」
「えっ……？」
「大丈夫よ、周りには誰もいない。今ここでは、ただの飼育監と食用児」
ママが、優しいママを止めた。そして、やっぱり2人……いや、レイも含めた3人のことを疑っていたようだ。こうしてわたしが脱獄の作戦に加わっているところを見られてしまったけど、もうダメなの……？ いざとなったら、本当に……殺して……強行突破……？
しかし、ママが初めにとった行動は、わたしたちの説得だった。いつか、門へ行ったことを明かした“わたし”に言ったような、偽りの幸せを受け入れさせる建前。
「愛情いっぱいの一生を送り、満たされて死んでいく。それのどこが不幸だと言うの？」
つまりママは、今日出荷のノーマン以外は、まだ出荷するつもりはない。これは、自分の手による制御のための行動だ。それだけベストコンディションの
「わかったよ、ママ……。もう、いい子は辞める」
死ぬ瞬間まで幸せなら、その人生全て幸せ？ ……本来あるものを奪われているのに、そんなわけがない。
「……行って、ノーマン！！」
2人も“即出荷”はないと気が付いて、強行突破に動き出した。今ママに止められてしまえば、もうノーマンの出荷は避けられない。ここでコンパクトを奪って、すぐに発信機を壊せば──
((なら、ここまで“追求”できる完璧な
『エマッ……！！』
Control ―制御―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
