31.Dismissal ページ34
──No side──
ノーマンたちが森へ急いでいる一方で、レイはイザベラと話をしに行っていた。まずは「何故、よりによってノーマンが途中出荷なのか」「何故、牧羊犬である自分にそれを伏せたのか」という内通者としての抗議。もしそれで十分な時間を稼げなかった場合は、Aが既に壁の向こうの下見を終わらせているという情報を売るつもりだった。
レイはハウスの中へ入り、イザベラを探すと、すぐに見付けることができた。しかしその途中、クローネの姿が見えないことに気が付いてしまった。
(シスターの姿が見えない……。どこで何してる？)
「シスター・クローネは排除した」
「え」
レイはその言葉に耳を疑い、クローネが寝泊まりしていた子供部屋へ走った。ドアを開けると、私物はなくなっていて、もぬけの殻となっていた。
「要らなくなった。だから排除したの。……あなたもよ」
「は？」
「取り引きは、今この時をもっておしまい」
「なんで……ママには俺が必要だろ！？ 水面下で間接的に制御するために！」
突然の解雇宣言に、レイは“時間稼ぎのため”という目的を一瞬忘れて食い下がった。
「俺は上手くやってた。ママにとって使える存在だろ！？」
「そうね。だから側に置いていたわ。たとえ、嘘つきの裏切り者でも」
「ッ……。それでも……問題ないはずだろ！？」
「確かに、あなたに落ち度はない。これは不当解雇よ。でも、事情が変わったのよ」
(事情……？ だから突然のノーマンの出荷かよ！？)
そして、イザベラはコンパクトを取り出した。
クビにされてしまった以上、“密告”は使えない。それでも、なんとしても今はママの目を逸らさなければならない。レイはそう考えてコンパクトを奪おうとするも、部屋に閉じ込められてしまった。
「じゃあね、レイ。今までお勤めご苦労様」
Dismissal ―解雇―
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
