30.Hiding ページ33
「門で鬼が言ってたでしょ？ 大事な商品だから、指の先だけでも欠けてたらダメだって。私たちは“高級”で“特別”。出すときはちゃんとしてなきゃダメなんだよ」
「病気なら食わんだろってことか……。よし、そうしよう」
「しんどいけど、いいよね？ 2人とも」
「おう」
『私、熱出てたばっかりだけど……全然いいよ、ノーマンのためなら』
「なんで……おかしいよ、そんな……」
「ノーマンが死んじゃうより、全然いいよ！ 大丈夫。一緒に生きよう？ ノーマン」
「うん……」
そして、ノーマンが切り出したことによって、私たちはレイの秘密を知った。この農園の全容の説明も受け、エマとノーマンが見てきたものの裏付けも取ることができた。
ちなみに、洗濯の時間なのにこうしてある程度の長話をすることができたのは、既にアンナ、ナット、トーマ、ラニオンはシスターの話を盗み聞きして、真実を知っているからだ。ちっちゃい子たちなら“やっているフリ”である程度騙せるから、「まじめにやってない！」とからかわれることもない。
*****
──『“毒”の話はもう使っちゃったんだよね。どうやって時間を稼ぐの？』
──「追加で情報を売れば、発信機を無効化して姿を消す時間だけなら……。それに、“スパイ”として話すこともあるし」
──『じゃあ、ひとつ言っておきたいんだけど……』
急いで荷物などの準備を整えた私たちは、森へ出発した。3人で来ているのは、潜伏場所を探したり、荷物を運んだりするためだ。
レイには、「ママは塀の向こうが崖だって知ってると思う」と伝えた。だから、下見の件までなら情報を売っても危機感は持たれないだろう。だから今は、ノーマンを──
………………。
Hiding ―潜伏―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
