29.Notice ページ32
「あっ、A！ もうだいじょうぶなのー？」
『うん。元気になったよ！』
ちっちゃい子たちは、2日間も寝込んでいた私を結構心配してくれていたらしい。ありがとう……可愛いね……。
そういえば、原作では昨日出荷されてしまうはずだったシスターも、まだハウスに残っていた。死んでしまっていないというのは少し嬉しいが、この差異が脱獄に影響を与えないかが心配だ。
しかし、そう呑気に考えていた矢先だった。朝食の準備でみんなが集まっているタイミングで、ママはみんなに呼びかけた。
「みんな、聞いて。いい知らせよ。ノーマンの里親が決まったの。急だけど、
ママと共に立つノーマンは笑っていた。未来は、変わってなどいなかった。
*****
「どういうことだ、ノーマン……ッ！！ あの反応だと、お前、知って──」
「僕も、知らされたのは昨日だよ」
「じゃあそのとき言えよ！ 夜なら、お前1人で先に逃げることだってできただろ」
「塀の外は崖だったんだ。逃げられない」
「発信機はもう壊せる。逃げたフリをして、準備ができるまで敷地内に潜伏すれば──」
「たとえ嘘でも、僕が逃げたら警備も厳しくなる。レイやエマが代わりに出荷されるかもしれない。もしかしたら、Aやドンやギルダだって…………。僕の代わりにだれかが死ぬなんて、絶対に嫌だ」
……ダメだ。会話の流れが、原作と同じになってる。せっかく、少し変わってたのに……！ 既にノーマンの出荷が決まってしまっては、止められない。「他が代わりに出荷されてしまう」という主張は、正論だ。
ノーマンの出荷は、他2人を脱獄させないための策だと思っていた。だから、少しでも疑いを減らせば、こうはならないと思っていたのに。原作では、レイの二重スパイはママにバレていて、それは実際に今も同じだろう。それでも、最初の時点から私が門に行ったという証拠しかなかったのに、結局疑いの度合いは変わらなかったの……？
その時、そろそろテストを始めると呼ばれてしまい、話し合いは中断することになった。
*****
なんとかテストを終えて──こんな状況でも
「ねえ、風邪ひこうよ」
Notice ―通告―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
