26.Initiative ページ29
一瞬、物置かと思われたそこは、地下室への扉も設置されていた。
((“良い子”は勝手に入らない書斎の中に、鍵付きの隠し扉、そして更に地下へ隠す……。かなり用心深い))
「暗い……何も見えない……」
「待って、さっきそこにランプが……」
ギルダの持ってきたカンテラを使って地下へ降りると、そこには大量の本、子どものおもちゃ、旧型の通信機器が置いてあった。
「！ リトルバーニー！」
「これ、ただの休憩室なら隠さないよね？ コニーが里子に行ったのなら、リトルバーニーだって届けてあげてるはず。本当だったんだ……」
並んでいる子どものおもちゃは、今までハウスを出ていった子どもたちが気に入っていて、一緒に持って行ったはずのものだった。
『これはクラリスの、これはヴィクターの……。多分、
「でも、やっぱり変だ……」
『どうしたの？』
「……なあ、A。どうしてお前らは、相手が悪い人だってわかったんだ？」
『…………』
「お前らの話も、本当に事実なのか？ ママはもっとヤバくて、コニーはもう──」
ドンが4人の嘘に気付きかけたとき、上の階からドアの閉まる音が聞こえた。今、書斎に入って来たのは、イザベラらしかった。
『ドン、リトルバーニーを元の位置に戻して。他は触ってないよね？ カンテラは……しょうがない。洗面所の方から出るよ』
「うん！」
*****
──A side──
ママの書斎から出て少し歩くと、“本当のA”は戻って行ってしまった。秘密の部屋が見たかったってことなのかな……。
今さっきわかったことだが、“本当のA”が出ているとき、私は自由に体を動かすことができない。そして普段、私の意思で“本当のA”を出すことも出来ない。つまり、主導権は“本当のA”の方にあるということだ。
“本当のA”が「行動したい」と思うことが多くなっている。意思の疎通はできないから、“本当のA”は私が未来を知っているとは思っていない。もし、こんな私には任せておけない、と判断したら……私は、どうなる……？
Initiative ―主導権―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
