23.Suspicion ページ26
「ところで、さっきAもシロだって言ってたよな」
「うん。レイと同じように、ドンとギルダに教える予定の場所を偽ったけど、ダミーのロープは失くなっていなかった」
2人の話が終わり、見つからないように離れようとしたとき。思いがけず、私についての話も聞こえてきてしまった。
「Aはお前らと門に行ったけど……やっぱり、怪しいと思うか？」
「レイが内通者だと予想したのは、それがママにとって最適で、僕らにとって最悪だったからだ。でも、Aは……行動に違和感があった」
違和感か。そりゃあるだろうな……。
「レイがいつも言っている通り、Aはテスト以外であの頭脳を使おうとしない。そして、普段から感情もあまり隠そうとはしていない。
でも、あの夜のAは、とても冷静だった。それから、僕らの話をすぐに理解して、反応を返すようになった」
「お前らが動揺してるから逆に冷静になって、事態の深刻さに触発されて、頭を使うようになった、とも考えられなくはないが……」
「それにしては、相変わらずの時も多い。あまりにもアンバランスだ」
私としては、ちゃんと3人の話に疑問を挟んだりしていたつもりだったけど、やはり未来を知っていることで生まれる“反応の良さ”は滲み出てしまっているらしい。
「あいつ……本当に仲間なのか？ 仮にあいつも内通者だったら、俺も知らない内通者ってことになる」
「頭の悪いの振りをしてレイさえも操ろうとするのなら、あの中途半端さは必要ない。今回、Aは動かなかったし、ひとまずは様子を見よう」
これで、2人の話は終わりそうだ。今の所、原作と異なっているのは、私が疑われていることのみ。そしてそれは、私がここに存在している時点で大きなイレギュラーだから、仕方がない。大丈夫。このまま、大きくズレることなく進めば…………。
*****
──No side──
「……さっきの言葉が嘘だったら」
わかっているな、とレイはノーマンの肩を叩き、部屋を出ようと扉へ向かった。
「わかってる、嘘じゃないよ」
という声を聞き、扉は閉じられた。
(でもあいつ……。あの日より前でも、たまに“変”だったんだよな……。普段は馴染んでるくせに、ほとんど喧嘩しないし、サラッとその場を収めている時がある。そういう性格だっていえばそれまでだが……)
Suspicion ―疑い―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
