22.Sheepdog ページ25
「はははははッ！！」
子供部屋前の廊下をうろうろしていると、レイの笑い声が聞こえてきた。ノーマンのベッドに隠してあったダミーのロープを確認したタイミングだ。
内通者に関して、何か変化が起きているかもしれない。それを確かめるために、私は2人の会話を盗み聞きすることにした。
「あーあ、上手くやってたと思ったのに。お人好しのお前らならもうちょい騙せると思ってたけど、存外早く気付いたな。そうだよ、俺がママの内通者だ」
「……我ながら嫌気がさすよ。シスターがハウスに来た夜から、真っ先にレイを疑った。ついでに言えば、君、今回限りの即席内通者じゃないだろ。レイは、いつからママのスパイだったの？」
「ずっと前から。……要するに、俺は羊飼いにおける牧羊犬さ」
「全部知っていて
「ああ」
レイはいつもクールに振る舞っていて、輪に加わっていることも少ない。でも、辛くないわけがない。いつも出荷の日の前後は、やっぱり落ち込んでいるように見えた。
……いや、それどころかレイは元々、自分は死んでもエマとノーマンに生きて欲しいと願って行動してきていた。そうやって考えられる人が、共に生活している子を何度も見殺しにするなんて、半端な覚悟でできるようなことではない。
「──ずっと気になっている不可解もある。この脱獄を仕掛けたのも、レイなんでしょう？ レイは僕らを制御しながら、同時にママをも制御してくれていたんじゃないの？ レイは、どうしてママの
「……志願した。全ては、この脱獄のための準備さ。報酬で『外』の世界を探り、発信機の壊し方を突き止めた。……わかるか？ 今、お前の目の前にいる俺は、最強のカードだ。全部、
「お前ら3人」とレイは言った。その言い方からして、考えが変わって自分を含めている訳ではないだろう。……私のことも、その中に入れてくれているのかな。
「──エマを騙せ。連れて行ってもドン、ギルダまで。それ以外は置いて行け」
「『全員』は諦めろってこと……」
「できなけりゃ、エマもろとも
「……わかった」
Sheepdog ―牧羊犬―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
