20.Dummy ページ23
『でもそうなると、ドンとギルダを引き入れる話は？ やめておいた方がいいのかな』
「いや、問題ないよ。この2つは同時に出来る。仲間にでき次第、“情報源”かどうかをあぶり出すんだ。スパイならこちらの切り札にもなるしね」
「情報を操作して逆に敵を撹乱したり、こっちの有利な状況をつくることも不可能じゃない……か」
「手始めに1つ仕掛けてみよう。嘘のロープの在り処を教えるんだ。僕らの懐に潜り込んで重大情報を得たら、“情報源”は必ず動く。だから、そのためのダミーのロープを用意したい」
『ダミーのロープ……。またテーブルクロスで作るの？』
「いや、今回はダミーだから、簡単な物でいい。なわとびとかね」
「それと、レイ。あれから発信機を壊す算段は順調？ あとどれくらいで整う？ 」
「え。半月……いや10日あれば」
「じゃあ、脱獄決行は10日後の11月8日にしよう」
来た。レイの内通発覚に、自分を犠牲にする下見、レイさえ出し抜く脱獄計画……。ここから、ノーマンの怒涛の戦略が始まる。
「ちょっ……急すぎない！？ いや、いいんだけど」
『いよいよだね……』
「よかねぇよ！ ママの目的は“制御”。だから時間はあるって話じゃねぇのかよ！？」
「うん。だからこそだよ。ママの裏をかきたい。だから、発信機を壊し次第、最速で脱獄を決行しよう」
レイはまだ言いたいことがありそうだったが、ドンがこっちに近付き、言った。
「おーい、そろそろ休憩終わって2回戦やろうぜ」
今は鬼ごっこ訓練の休憩中。あまり長々とは話し合えない。
そして、戻ろうとレイとエマについて行こうとしたとき、ノーマンから声をかけられた。
「あ、そうだ、A。隠し場所は、ドンには脱衣所、ギルダには物置部屋と伝えて“情報源”を探る。だから、まだ核心に迫ることは秘密にしておいてね」
『うん、わかった』
あれ？ 場所が変わってる？ 確か、ノーマンのベッドと2階トイレの天井裏って伝えるんだったような。
……私も疑われてる？
Dummy ―替え玉―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
