19.Traitor ページ22
シスターとの鬼ごっこを踏まえて、今日からはチームでの鬼ごっこ訓練が始まった。チームは細かい方が機動力が上がるのだけど、私にはチームを率いる頭脳はないからエマのチームで動くことになった。私だけ何も出来ないから少し申し訳ない。
そしてその後は、恒例の作戦会議だ。
「この10日余りで、ママの手の内が見えて来た」
「どういうこと……？」
「結論から言うと……おそらく、ママは標的が僕ら4人だと既に特定できていると思う」
『え』
「特定？ 見当や疑いじゃなくて？」
「特定だね。分かりやすいのは、シスターの使い方かな。これから標的を特定しようとするのなら、疑いをかけた僕ら8人をマークするべきだ。けれど、ママはあくまで全体の監視の強化だけをさせている。だから、ママは特定する気がなくて、その上で僕らを好き放題動かしている」
というノーマンの考察に驚いたが、そういえばこれは原作通りの発言だ。そして、原作では当たっていたこの考えは、今は間違っているはず。レイは2人のことをママに話していないと言っていたし、“疑い”はともかく“特定”されるほどのボロは出していない。
それでもノーマンの言うことが成り立っているのは、多分「レイがある程度信用のある内通者だ」という前提が含まれていないからじゃないかと思う。実際は、ママが完璧に特定出来ていないとしても、レイさえ制御すれば全体の間接制御は可能なんだ。
まぁ、ママの方針が私の知識と変わらないのならやりやすくはある。
「でも、発信機からはなんの断定も出来ないはずだよね？ それに、特定してるからって好き放題動かしておくなんて……」
「既に他の見張りがそばにいたら？ って話だろ」
レイが白々しくそう言うと、ノーマンはうなずいた。……先の出来事を知っていて計画に加わっている私も、白々しさで言ったら変わらないか。
「多分、子供たちの中に内通者がいる」
「鬼の手先……裏切り者か」
「いや、そうとは限らない。無自覚に情報を流している場合もあるだろうからね。厳密には、ママの情報源。おそらく、ママの策はそれを利用した標的の掌握と制御だ」
Traitor ―裏切り者―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
