14.Transmitter ページ17
本部からやって来たばかりのキャロルには、発信機が埋められた痕跡がまだ残っているかもしれないため、赤ちゃんのお世話を許されている私とエマが確認することになった。ママの寝室で最年少のお世話を手伝えるのは、年長の女子だけなのだ。
『どう？ エマ』
「うーん」
キャロルは当然何をされているか分からないため、エマに触られてふにゃふにゃしている。……可愛い。今朝、ママの前でキャロルを可愛がった動機は脱獄計画のためだけど、内容は本心だ。赤ちゃんと小動物の可愛さは世界を救う……。
「……あっ」
そしてエマは、左耳の痕を見つけた。
「これ……病気の検査のために採血した痕だって、昔ママが言ってたけど……」
『それは嘘だったってことだね』
*****
『──っていう感じだったんだけど……』
「なるほど、耳か……。確かにあるな」
と、レイは自分の左耳に触れて言った。注意して触ってみると、少しだけ何かがある感触がする。
「発信機の場所は分かった。あとは“全員を連れ出す方法”だな。みんなママを信じきってることと、多分真実に耐えられないことが問題だ……」
「嘘ついて連れ出す、とかになるのかな……」
『でも、連れ出した先に鬼が居たら余計に混乱しそう』
「それもそっか……」
「それと単純に能力不足な。分かりやすく言えば、足手まとい。運動が苦手な奴もいるし、ロクに歩けない赤ん坊もいるんだ」
「それについては考えた！ 鬼ごっこするのはどう？ ノーマンが鬼で、みんなが頭と体を使って逃げるの」
「遊びのフリをした訓練ってことか……」
「本物の鬼から逃げられるようになるってわけじゃないけど、逃走の基礎力は上げられると思う。体の使い方は私とAが教える……。頭の使い方は、ノーマンとレイが先生で」
頭の使い方を教われるのはありがたい。足跡を消すとか、原作でも言われていたのは覚えてるけど、やっぱり実際に教わらないと分からない。
『それで、今日からやるの？』
「うん、今から！」
Transmitter ―発信機―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
