12.Preparation ページ15
その日の夜、私たちはママに呼ばれた。例のお手伝いだ。これの目的は、シスター・クローネを迎える準備、彼女が来るまでの間の行動の制限、その目的を気付かせないことでどちらが上手なのかを見せ付ける……という感じだったはず。
シスターは私たちの尻尾を掴もうとするはずだけど、どれもママやノーマンに阻止される。だからシスターが来ることは気にしないで良くて、普通にお手伝いしてれば大丈夫だろう。
そう考えながらママの元へ向かうと、そこに居た人物は思ったより多かった。
『アンナに、ナット……？』
9歳の2人が、お手伝い組の仲間入りをしていた。私が1人で行ったって言ったから、ママの中での疑わしい候補が少し広がったのかな……。私が直接関係していない子にまで明確に影響が出たのは、多分初めてのことだった。
「ママ、どうしたの？」
「……お手伝い頼めるかしら？」
*****
あれから数日間、私たちは自由時間のほとんどをお手伝いに費やした。
「あー、遊びてぇー！ なんで俺らだけ罰ゲームみたいな手伝いさせられてんの！？」
「私たち、何が悪いことしたかしら……」
『まあまあ。ママだって忙しいからじゃない？ 日々のお礼だと思ってやろ』
でも、みんながいる前だとろくに話し合いも出来ないんだよな……。と考えていると、ギルダがドンに声をかけて、バケツを持って部屋を出て行った。でも、アンナとナットはまだ部屋に居るままだ。
やっぱり、コソコソしない作戦会議の時間もあった方が良いのかな、と思い目配せすると、ノーマンは頷いた。
『ごめん、アンナとナットもちょっと手伝ってくれる？』
「どうしたの？」
『ほら、ここ』
と、私は壁を指さした。
「あぁ、シミ？」
『うん。私はママに言って重曹貰ってくるから、2人は道具用意してくれる？』
「分かったわ」
そして、私は2人と一緒に部屋を出た。今、ママはハウスの外に居るはずだから、階段を降りて玄関へ向かう。すると、丁度ママが中に入って来た。偶然と言うより、発信機見てたんだろうなぁ……。怖い。
「あら、どうしたの？」
『えっと、壁にシミがあったから、重曹か何かが必要なの』
「分かったわ、私が持っていくから掃除に戻っておいてくれる？」
『え、ママがやるの？ 分かった』
普段、重曹くらいなら私たちでも触っていいのに、今回はやらせて貰えないらしい。やっぱり、警戒されてるか……。
Preparation ―準備―
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作者名：時雨 | 作成日時：2022年6月22日 22時
