別の顔 ＊ ページ39
・
ちゅっ、と触れるだけのキスの後、辰哉さんは私の手を引いてBARのある建物の裏側へ私を連れて行く。
鉄錆のついた古びたドアを開け、中には階段があってBARと違いこちらは上がる。
コツコツと互いの靴の音だけが空間に響いた。
階段を上るともうひとつドアがあって、ドアノブを握ってゆっくりと回し開けると「入りな」と促されて、キョロキョロと周りを見ながら中へ。
応接セットがひとつドーンと中心にあるだけの、とても殺風景な部屋。
「暫くは誰も来ないよ」
背後でガチャとドアの閉まる音に振り向くと、辰哉さんは上着を脱いで、壁にかけてあったハンガーに掛けた。
「良いことしちゃう？」
「え」
カフスボタンを外して袖を捲りながら私の方へ歩み寄り、片方の口端を吊り上げた辰哉さんは私をソファへと追い込んでくる。
踵がソファに当たって、「きゃっ！？」と背後に倒れてしまえば革製のソファがギシッと音を立て、辰哉さんも同時に片膝を乗せた。
「あ、あのっ」
「キスしてほしいんでしょ？ さっきので足りる？」
「えっと、」
ん？ と首を傾げられて、大人の余裕を醸し出した辰哉さんがゆっくりと迫ってくる。
ドクン、ドクン。
顎を持ち上げられ、傾いた辰哉さんの顔を恥ずかしくて見ていられずギュッと瞼を閉じた。
「ん、」
唇に濡れた感触にビクってなる。
さっきのような軽いキスかと思えばそうじゃなく、唇で私の下唇を食べるようなキス。
「っ、ンンっ…っ」
「ふふふ」
楽しそうに、ちゅっちゅって。
何度か唇に触れて、舌が隙間から咥内に侵入してくる。
またほんのりと煙草の味がして、薄らと目を開くと伏し目がちになった辰哉さんと視線が合った。
色っぽいなんてものじゃない。
男性に対してこんなにもドキドキしたことなんてないよ。
「ぁ、っ……ん……」
「ん、気持ちよさそうだねぇ？ このまま食べちゃっていいの？」
聞いてくるくせに既に手は裾から潜り込んできて脇腹を撫でている。
ふぅふぅ、と濡れた唇を噛んで私は小さく頷いていた。
……もう我慢できないんだもの。
私の全てが辰哉さんを求めているから。
眉を下げた辰哉さんが、泣きそうな顔をして笑ってる。
それはどんな感情なんですか？
と聞きたかったけど、辰哉さんの手によって散々泣かされる私にそんな余裕はなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2263人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきんこ(プロフ) - あきさん» あき様、こんばんは！コメントありがとうございます！極道VS刑事が楽しんでもらえてますか？ ダメよダメと思う程燃えるのともあるよなーっていう恋愛にしております(o^^o)あ、私も経験はないですよ（笑） (2021年5月6日 23時) (
レス) id: 07fd991e4a (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - ゆきんこ様、こんばんは☆紫さんの極道と黒さんの警察官…もっと早くに読めばよかった…(>_<) ダメなのは頭ではわかってるのに、危険な香りがする男に惹かれるの…わかる気がする(//∇//) ☆あ、経験はないですよ(笑)♪ (2021年5月6日 21時) (レス) id: 4aac9fb6a0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - megさん» meg様、コメントありがとうございます!! そして作品を気に入ってもらえて嬉しいです(^^) ありがとうございます!! (2021年5月4日 20時) (レス) id: 07fd991e4a (このIDを非表示/違反報告)
meg(プロフ) - やっぱりゆきんこさんの作品大好きです!! (2021年5月4日 16時) (レス) id: dd471eef77 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - reaさん» rea様、初めまして！コメント有難うございます。ドラマ化とかなんて嬉しいお言葉をっ!!実は裏設定？として夜10時枠頃のドラマを意識して書いてるところがあるので、そう言ってもらえてとても嬉しかったです!何度も読み返してもらえるように頑張ります(^^) (2021年5月4日 8時) (レス) id: 07fd991e4a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆきんこ
| 作成日時：2021年4月19日 21時
