【ンダホ】優しさを抱きしめて ページ17
ンダホside
最近の日課は散歩をすることだ。
結婚して、ゆっくりと家庭と動画との両立が出来るようになってきた今、一人の時間がかけがえのないものだった事に気付かされた。
最愛のAと一緒にいる時間も大事だ。
だけどそれ以上に、1人で悩み、解決する時間も必要なのだ。
そんな時間を自然と作ってくれるのが、散歩だった。
ン「風が気持ちいいなぁ〜」
緩やかに香る花の匂いは、この春の陽気を感じさせるのに充分だった。
ふと前を見ると、階段を上りたそうにしているお年寄りがいた。
白髪は綺麗に1本に整えられ、ちょこんと乗った帽子が若かれし頃のあどけなさを彷彿とさせた。
ン「おばあさん、お困りですか?」
婆「えぇ、えぇ。
歳をとってから、妙に足が動かなくなってねぇ。
荷物も持てなくなって、大変よねぇ。」
脇を見ると、小さな花柄の鞄があった。
俺は鞄を持ち、彼女の前に屈んで背を向け、こう言った。
ン「階段の上まで、乗っていきますか?」
婆「あらやだ、白馬の王子様かしら?嬉しいわねぇ」
華奢な体を担ぎ、ゆっくりと階段を上る。
自分一人でも中々厳しい場所だが、今日はなんだか頑張れそうだった。
…のも束の間、息が切れ切れになってきた。
しかし、背中の彼女は階段からの珍しい風景に興奮気味だった。
婆「少し下ろして頂戴、ここは東京タワーがはっきり見えるのねぇ」
ン「…よいしょっと。
本当だ、僕も気づきませんでした!こんなに綺麗なんですね…」
晴れ渡る空に赤のラインが美しく映える。
歳を聞くのは野暮だと思ったが、恐らくこの街が焼け野原の時から、栄える姿と共に育ってきたのだろう。
大きな歴史と感動を目の当たりにし、俺は俄然やる気が出た。
残りの階段も必死に上り、見事上まで辿り着いた。
婆「本当にありがとうねぇ。
貴方みたいな親切な人がいて、助かったわぁ」
ン「こちらこそ、新たな景色を見られて嬉しかったです」
婆「そうだ!貴方、お花は好き?」
ン「あまり馴染みは無いですが、好きです」
婆「ここの近くのお店、とても素敵だから覗いてみてね?きっと貴方ならお花にも優しく出来そうだもの」
ン「そんなもったいない言葉、有難いです」
軽い会釈を済ませ、花屋がどの辺にあるかを聞こうとしたが、既に彼女は去っていた。
…花屋か、Fischer'sも花のブームが来ているので、気になってはいた。
直ぐにスマホで調べると、本当に近くにあった。
もしかしたら、また新たな出会いがあるかも、と胸を膨らませた。
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作者名:あかね | 作成日時:2020年4月30日 3時