【シルク】大好きってほどじゃないけど【アネモネ】 ページ2
シルクside
シ「ふぁぁ…ぁあ」
数時間向かった編集の手が止まる。
動画のエンコードが始まれば、終わるまでの時間がとても退屈なのだ。
Twitterを見るのも億劫だとばかりに、俺は真っ白な天井を馬鹿みたいな顔して見つめる。
『こら、首痛めるぞ』
シ「いいじゃねぇか、俺身体は強いし」
『明日ヒィヒィ言っても看病しないからね』
シ「ちぇ、つまんねぇの」
A、一応彼女という扱いではある。
どうしてそう曖昧なのか、それはビジネスカップルだからだ。
事務所の仕事先で出会ったのがAで、俺達の活動にも理解があった。
その上でファンの方々からの求愛を避けるべく、彼女にビジネスカップルを依頼したのが半年前。
快く引き受けてくれた次の日、早速2人で報告動画を出した。
メンバーにはしっかりと事実を伝え、今に至る。
【お互いの事に深く関わり過ぎない】
そうした約束を決め、2人は好きな事をしつつ奇妙な同居生活を送っていた。
…が。
最近Aの様子がおかしい。
彼女兼マネージャーという立ち位置を乱用して、他のメンバーとヤケにつるんでいる。
どうしてか、無性に腹が立っていた。
それと同時に驚きもあった。
いつの間にか、Aに好意を抱いていたからだ。
護ってやりたい、渡したくないという思いが芽生え始めていた。
そして明後日、2人の半年記念日なのだ。
女性は贈り物をもらうと嬉しいと聞いたので、明日の撮影と編集はメンバーに丸投げし、俺は動画のネタを探すという口実で街に出よう思っていた。
シ「明日はどこに行こうかなぁ」
『あら、動画のことほっぽってサボりに行くのに?』
シ「んなわけあるか、しっかりネタ探すんだよ」
『顔に「サボる気満々です」って書いてあるよ』
シ「書いてねぇよ!」
たわいも無い話がこんなにウキウキと感じたのは、果たしていつぶりだろうか。
とっくのとうに出来上がった動画を投稿して、俺はAといつも通りの夜を過ごした。
朝だ。
今日は沢山見て回るため、少し遠くまで出かける予定だ。
シ「いい子ちゃんは黙って家で待てるかな?」
『ムカつく言い方、こっそりついて行ってやりたい』
シ「駄目だ。何のために動画で顔隠してやったと思ってるんだよ」
『…一応彼女ですけど?』
シ「…ま、まぁ、な」
ぎこちない返事をした。
彼女は、ビジネスカップルが本当は嫌なのか?
そんなことを考えつつ、俺は外に出た。
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作者名:あかね | 作成日時:2020年4月30日 3時