【完結】【進撃の巨人】赤い血の花束【エレン】 (ページ11)

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９話【死を見るか生を見るか】ページ11

「エレン。
こいつのことを知っているか？」

兵長はこちらを見ないで尋ねた。

「はい、知っています。
俺を檻に入れた人です」

「……そうか」

「巨人に食われて死にました……」

俺はなぜか嘘をついた。

巨人ではなく
オオカミに殺されたのだと言えば
兵長に怪しまれると思ったからだ。

しかしその嘘を知らない兵長は
いつもより暗い顔をして
その死体を見ていた。

そして兵長は俺を無視して
奥へと進んでいく。

その死体の近くでたたずみ
俺はまたブレードを首の方に向けた。

だが死ぬのは怖かった。

こんなところで死ぬのなんて
絶対に嫌だ。

もう少しで掴めそうな情報が
消えてしまうではないか。

どうしてここで……。

するとミカサが涙を流し始めた。

泣き声にならない微かなしゃっくりと共に
俺の手を握りしめた。

「エレン。死んじゃダメよ！
あなたが死ねば私はまた家族を失う。
あの時みたいな日々は戻ってこないのよ！！
そうでしょ？」

ミサカの言う通りだ。

俺は死んじゃいけないんだ。
死ねば楽になるかもしれないが
俺はまだ何も事実をつかんでいない。

死にたくはねえよ。

「でも、死ねば楽になるし
君の人生を終わらせることもできるんだよ？
別に悪いことじゃないよね？」

アルミン……。

本当にこいつはアルミンなのか？
友達だったら
止めようとするはずだ。

どうして？

俺はこいつがアルミンじゃないことに気づき
ブレードを放り投げた。

そしてミカサに抱きつき
生きることを決意した。

「俺は死なねえ。
俺は生きてこの世界を進み続けるんだ」

ミカサは泣いていた。

大きな声を上げながら
大粒の涙をこぼしていた。

「エレン……ありがとう。
私を選んでくれて……」