【短編集】Yesterday's Tomorrow 【歌い手】 (ページ9)

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□遠距離ページ9

［senra］

遠距離が始まってから、約1年。

お互いに忙しくない時に何度か会うことは出来ていた。

けど、だんだん回数は減っていって、電話もしづらくなって。

せっかくの連休も気分が落ち込んでいた。

もしかしたら……なんてイヤな想像を打ち消すように、一人で大好きな甘いものでも食べに行こう！と気を紛らわせていると、スマホが鳴る。

まさかね、と思いながら画面を見たら"センラ"の文字。

急いで通話ボタンを押した。

「もしもし？」

「あ、A…？久しぶりやね」

「うん、」

「ほんまにごめんね？忙しくて。」

このセリフ、いろんなドラマとか漫画で聞くやつ。

ほんとかな…？なんて疑ってしまいそうな自分が嫌になる。

「大丈夫、ちゃんとわかってるよ」

「そっか、なら良かったわ」

言葉ではそう言いながらも、やっぱり少し心配で。

「でも、」

「ん？」

「会いたい…」

「…。」

「ごめ、ワガママなのはわかってる、ごめん。」

一回会いたい、と口にしてしまえば、どんどんと感情が溢れ出してくる。

それを悟られないように、必死に隠す。

ズシ、と少し重くなってしまった空気の中、口を開いたのはセンラだった。

「なぁ、」

「俺が今会いに行くって言ったら、Aはどう思う？」

なにそれ。

「…嬉しいに決まってるじゃん」

その途端、うちのインターホンが鳴った。

ドアを開けると、ちょっと照れくさそうに立ってるセンラ。

「もう、バカ……」

私が抱きつくと、センラも抱き締め返してくれる。

「俺も会いたかった」

その一言で、さっきの不安なんてどこかへ吹き飛んでしまった。

……

「こんなの、マンガみたい」

「ホンマはこんなんキャラやないねんで？」

「いいの、嬉しかったんだから」