二皿目 ページ2
「じゃあ、お水のおかわりをお願いできますか?」
「かしこまりました」
にこりと笑ってカウンターに戻っていく背中を見守りつつ、私はさっき思い出した記憶を軽く整理していく。
先程も言った通り、この世界は『名探偵コナン』という漫画の世界である。
オタクだった前世の私は、この世界のキャラクターのことが大好きだったのだ。
グッズも沢山買ったし、映画も何度も見に行った。
その好きなキャラクター達の筆頭が、最推しだった諸伏景光。
そう、何故か今ポアロで働いている警視庁公安部の警察官である。
さっきハムサンドを運んでくれた彼は、今はカウンターでお湯を沸かしている。
シュンシュンと蒸気の上がるケトルを持つ手は、骨張っていてとても色っぽい。
湯呑みに慎重に湯を注ぐ横顔が美しくて、私はほぅ、と感嘆の息を吐いた。
しかし、何故諸伏さんがここで働いているのだろうか。
毛利探偵事務所の一階であるポアロで働いていたのは、彼ではなく幼馴染の降谷零だったはずだ。
「あむぴの前に働いてたってこと? でもそんなこと先生は言ってなかったしなぁ……」
そもそも、今は原作のどの辺りなのだろうか。
諸伏さんが生きているということは、三年前の十二月七日より前なのはほぼ確実だろうが、だとすれば一体いつなのか。
「ヒロ君に髭あるし、K学の卒業式より後だよね。なら原作七年前はとっくに過ぎたってこと? え、じゃあ萩原さんはもういないの? マジで?」
せっかく原作知識ありで転生したのだから、萩原さんを救済させてほしかった。
警察学校組が既に欠けているとか、そんなのは辛すぎる。
なら何のために私は前世の記憶を取り戻したのだというのか。
え? 最推し諸伏さんにハムサンド給仕してもらうためだろうって?
そんな馬鹿な。
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真白(プロフ) - 天然石さん» こちらは元々掲載しておりました完結済み短編を再度掲載したものとなっております。短編のつもりで書いていたので、作者としましてはこの先続けるつもりはあまりございません。楽しみにしてくださったのに申し訳ないです……。 (2023年3月26日 22時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
天然石 - この小説終わったんですか?せっかく楽しみにしてたのに (2023年3月26日 14時) (レス) @page9 id: 9e1c69280d (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 泉さん» ありがとうございます!読みやすくてテンポ感のあるお話を心がけているので、そう言っていただけてとっても嬉しいです! (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千景さん» ありがとうございます!短編用で書き始めたのでここで終わらせましたが、結構気に入っている2人なのでそう言っていただけて嬉しいです。作者、何を隠そう景光推しでして……。これからもちょくちょく書くと思うので、また見かけられた際には読んでくださると幸いです! (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
泉 - 読みやすい! (2023年1月27日 13時) (レス) @page8 id: 5bd30ec6cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2023年1月24日 23時