103話:友達って ページ7
「A、そっちの皿はもう洗ってもいいのか?」
藤内君の意味ありげな視線が気になって背中を目で追っていた私に、久々知さんが声をかけてきた。
「あ、はい。大丈夫です」
さっき知らない一年生が返しに来たお膳を、三つまとめて流しの方へ運んでいく。
あれからずっと豆腐について話していた久々知さんは、まだまだ話し足りないから、と皿洗いを手伝ってくれている。
ひたすら豆腐の話をしながら。
そんなに豆腐が好きなら豆腐料理の配膳係の方がいいのでは、と言うと、「皿洗いはいつも当番でやってるから慣れてるし。ずっと洗っていたらAの手が荒れるだろ?」と爽やかに返された。
何だよ。ただのイケメンかよ。
私達がそんな茶番をしている間に大半の生徒がもう注文を終えたらしく、食堂前にできていた長い列が途絶えた。
そうなると配膳係の仕事はなくなってしまう。
もう少ししたら大量に洗い物がやってくるはずだし、現時点で流しにある皿だけでも片付けてしまった方がいいだろう。
「俺がやるからいいのに」
運んできたお膳の中身をそのままカチャカチャと洗い始めた私に、久々知さんは驚いたように目をまたたかせた。
「そういうわけにもいきませんから」
久々知さんに働かせておいて、自分はその間サボっている天女(仮)ほど悪印象を与えるものはない。
ただでさえ天女のいる食堂は注目を集めているのだ。
不用意なことなどできるはずがない。
「そうか。助かるよ、ありがとう」
「いえ……」
どちらかというと手伝ってもらっているのは私で助かっているのも私、礼を言うべきなのも私なので何とも言えず、へらっと愛想笑いを浮かべる。
「なあ、何とかならないのか?」
「はい?」
「その顔だよ」
一瞬何を言われたのかわからなくて、私は目をまたたく。
「この顔は生まれつきなのでどうにも……」
「そうじゃなくて、その愛想笑い。あと敬語も。俺達友達になったんだからさ、やめようよそういうの」
友達、と聞き返すと、「違ったのか?」と首を傾げられる。
「一緒に食べて、一緒に料理して、こうやって喋って。こういうことするのが友達だと思うんだけど」
久々知さんの言葉に、ハッとさせられた。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時