99話:豆腐語り ページ3
「Aちゃん、大丈夫そう?」
「あ、おばちゃん」
久々知さんから及第点をもらえたところで、おばちゃんが調理場へと入ってきた。
「はい。久々知さんからも美味しいと言っていただけました」
「そう、それは良かったわ。ねぇ久々知君、今から私達夕飯にするんだけど、一緒にどう?」
ちょっと早いけど、と言って久々知さんを誘い始めたおばちゃんに、私はギョッとして顔を向ける。
何を言っているのか。
こんなにも私のことを嫌がっていそうな人に一緒に食べろと言うとか、おばちゃんは優しいフリをして実は鬼だったのか。
そういえば、「おのこしはゆるしまへんで!」と叫んでいる時のおばちゃんの顔は般若のそれだった。
「もちろんご一緒させてください!」
……はいぃぃ!?
当然久々知さんは断るものだと思っていたら、彼は満面の笑みで首を大きく縦に振った。
信じられなくて目を見開く私を他所に、二人は楽しそうに話を進めていく。
「そうだ。それなら、僕に調理場を貸してくれませんか? お二人に冷奴をご馳走したくて!」
「まぁ、いいの? 今日の小鉢、冷奴にするか迷ってたのよね」
「もちろんです。今日の豆腐は木綿も上手くできたんですけど、おすすめは絹だったんですよね。でも、麻婆豆腐もお味噌汁の具もどちらも木綿豆腐がいいっておっしゃったじゃないですか。仕方がないので、今晩あたり勘右衛門達に振る舞おうかと思っていたんですけど──」
……おかしい。久々知さんからの好感度が異様に上がってる。
久々知さんが二杯目の味見の後私をAさんと呼んだあたりから雲行きが怪しくなってきていたけれど、だとしてもこのテンションはおかしい。
一人でひたすら豆腐について語りだしたのだ。
これではまるで本を前にした時の私、いや、それ以上かもしれない。
……ついに私も天女の妖術が使えるようになったってこと!?
そういえば昨日の夜、仙蔵さんが「前の天女様は途中から妖術が使えるようになった」と言っていた。
全く自覚がなかったけれど、私もいつの間にか天女様の力に目覚めていたということなのだろうか。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時