113話:ビバ! 図書室 ページ17
「ふわあぁぁあっ!」
ついにやって参りました、念願の図書室。
仕事でやって来た事務員としてではなく、一人の本好きとしてそこに足を踏み入れることができるのが嬉しくて仕方がない。
喜びにへにゃりと緩む頬が、赤く染まっているのが自分でもわかる。
「そんなに嬉しいのか」
「はい! 連れてきてくださって、本当にありがとうございます!」
図書室内に入ったため、人がいないとはいえ大きな声で喋ることはしたくない。
中在家さんに聞かれた私は小声で叫ぶという矛盾しているようでしていない方法で礼を言った。
息を胸いっぱいに大きく吸い込むと、古い紙独特の香りが鼻をくすぐる。
嬉しい。嬉しすぎる。
一日ぶりの本との再会である。
これを喜ばずして一体何を喜ぶというのか。
「登録手続きを行う。こちらへ」
中在家さんに言われて中央の長机の前に座った私は、彼の持ってきた貸出しカードに名前を書き始める。
あまりに暗いので、鞄から取り出したスマホのライトで手元を照らしながらだ。
火気厳禁であろう図書室で蝋燭を使う気になどなれないし。
なんで室町の図書室に貸出しカードなんてものがあるのか、というツッコミはもうしない。
学園に来てすぐに秀作君からバインダーを渡された時点で半分くらい諦めていた。
「図書室内では本を好きに持ち歩いたり、写本をしても構わない。外へ持ち出す時には必ず貸出し手続きをしてもらう。貸出しは同時に最大十冊まで可能。返却期限は二週間後だ」
学校図書室にしては随分一度にたくさん貸出してもらえるらしい。
保証金を支払ったりする必要がないのもありがたい。
他に図書室内は原則として私語や飲食が禁止されていること、利用できるのは昼休みと授業終わりの鐘から日暮れの鐘までの間であることなど、いくつか注意事項が述べられた。
それとは別で、私は図書委員会顧問の松千代先生か中在家さん、雷蔵君がいる時しか利用できないということを再度告げられる。
「制限をかけてしまってすまない」
「いいえ。図書室に入れて本が読めるだけで私は幸せなんです。全員が安心して本を楽しむために必要なことだってわかっていますから、大丈夫ですよ」
ぐっと拳を握って主張すると、中在家さんはおかしそうに小さく笑った。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時