97話:豆腐小僧 ページ1
豆腐定食、なんてもの需要があるのかと思っていたら、案外人気メニューらしい。
「五年生に久々知君っていうお豆腐が大好きな子がいてね、豆腐定食に使うのは全部その子が作った豆腐なの」
……五年生の久々知さん……火薬委員の黒髪美人さんか。
さっき煙硝蔵の前で会った印象的な黒髪の彼を思い出す。
「って、え? 全部久々知さんが作っているんですか?」
「──おばちゃん、お豆腐足りてる?」
私が驚いて聞き返したのと、食堂の入り口から件の黒髪美人さんが顔を覗かせたのがほぼ同時だった。
「あ……」
「久々知君。えぇ、大丈夫そうよ。いつもありがとうね」
入り口の真ん前の席に座っていた私は、ぱちりと目が合ってしまう。
私を見て少し嫌そうに眉根を寄せた久々知さんに、おばちゃんが笑顔で礼を言った。
「いえ、それは良かったです。……あの、天女様も作ってるんですか?」
「天女じゃないです、AAです。はい、おばちゃんから許可をいただいたので、豆腐の味噌汁を作りました」
私の言葉に何か考えるように唸っていた久々知さんが、おばちゃんの方をチラリと見る。
「おばちゃん、ちょっと味見させてもらってもいいですか?」
「もちろんよ」
お豆腐が大好きとのことだったから、自分が作った豆腐を使った料理の出来が気になるのだろうか。
それとも、純粋に私が作った料理が信用できないだけなのだろうか。
何にせよ、おばちゃんが了承してしまったからには味見をしてもらわなくてはならない。
立ち上がって調理場へ向かう私の後ろを、ムスッとした顔の久々知さんがついてくる。
「はい、どうぞ」
お椀を一つ取り出して、おたまで味噌汁を注ぐ。
くぴっとひと口飲んでお椀の淵を指で拭うと、久々知さんに差し出した。
「どうも」
ズズズ、と味噌汁を飲んだ久々知さんは、検分するような難しい顔をしている。
怒られるのだろうか、と戦々恐々としていると、久々知さんがこちらを向いた。
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真白(プロフ) - わそ姉大好きリスナーさん» ありがとうございます!ホントですか?それは光栄です。天女様系には素敵な作品も多くあるので、私の作品をきっかけに他の方のもいけるようになってくださったら嬉しいです(*´∀`*) (2023年1月29日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
わそ姉大好きリスナー - 面白かったです!自分は天女様系が苦手でしたけど、真白様のこの天女様系はなんかいけました!((^^ω)更新ファイト!!!!です(^^ω) (2023年1月25日 10時) (レス) @page23 id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - 千颯さん» わあああ!ありがたいお言葉ありがとうございます!!!私の更新が千颯さんの生き甲斐になっていたですって……?これからも気合いを入れて更新していきますので、楽しみに待っていてくださいませ! (2022年12月18日 18時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
千颯 - 毎週投稿を楽しみに生きてます( これからも作者さんのペースで頑張ってください!応援してます! (2022年12月11日 11時) (レス) @page18 id: ecd2d0aa76 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - れいらさん» この更新スピードは、れいらさんを始めとする読者の皆さんのおかげなんですよ!ご期待にお応えできるよう、これからも頑張りますね♪ (2022年10月22日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年10月22日 13時