55話:計算 ページ8
私がするはずだった書類整理は小松田さんの仕事となり、私はひたすら足し算をすることになった。
「算盤は使いますか？」
「えーっと、使い方がわからないので大丈夫です」
使ってみたい気持ちもあったけれど、使い方を知らない以上小松田さんか吉野先生に教えてもらうことになる。
手伝いに来ているからには仕事を増やすようなことをしてはいけないし、何より面倒くさい。
ゆるゆると首を振って断ると、私はスマホを取り出した。
……スマホに計算機機能を付けようと思った人、マジ英断だわ。
左手で数字を打ち込みつつ、鞄から取り出したノートに計算結果を片っ端からメモしていく。
「早い上に正確とは。Aさんは優秀ですね」
「あ、あはははー」
……すごいのはスマホであって、私じゃないんだけどね。
別に私は優秀でもなんでもないのだけれど、学園長先生に有能だから雇った、と紹介されたからには私はその言葉にふさわしい仕事ぶりを見せなければならない。
わざわざ訂正する必要もないだろう、と笑ってごまかす。
「それにしても、未来の人が今の字を読めなかったとは……」
独り言のようにぽつりと呟いた吉野先生に、私は顔を向けた。
「今までの天女様もおそらくそうだったと思いますよ。彼女達も最初は事務室で仕事をしていたんですよね。何も言われなかったんですか？」
私の言葉に、吉野先生は何かを思い出すように目をスッと細める。
「天女様も最初の数日は書類と向き合うフリだけはしておられました。ですが、気がつけば事務室にいらっしゃらなくなっていたので、そのような性根の方々なのだと判断しておりました。まさか書類が読めなかったとは思いもせず」
天女達も同じ日本語を話していただろうし、彼女達の持ち物はこの時代よりかなり質が良かったはずだ。
自分達より高度な文明の中で生活している人が、自分でもできることができないとは思いづらかったのだろう。
……天女様も、完全に悪い人ってわけじゃなかったのかな。
自分のことを『天女様』と呼ばせるだけあって、歴代の天女は自尊心が高かったのだろう。
見るからにへっぽこな小松田さんでも読める文字が自分に読めないだなんて、悔しくて言えなかったのではないだろうか。
数日間は頑張っていたというし、最初からやる気がなかったわけではなかったのだ、きっと。
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わそ姉大好きリスナー - Ahoy 学校行きたくねェェェェェェ 続編に出航〜♪ (2023年1月25日 9時) (
レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます！忍たまって鬼滅並みに難読苗字多いですよね笑。尼子先生の出身地の尼崎の地名から取っているそうなのですけれど、私も最初は漢字と読みがなかなか一致しなくて困りました。食満は初見じゃ絶対に読めないと断言できますよね！ (2022年8月12日 19時) (レス) id: 23eb6548af (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - マジで夢主ちゃんに同感です。食満って名字、最初は「しょくまん」って読んでしまいますよね。私もアニメで聞くまでしょくまんだと思ってました！ (2022年8月12日 19時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真白 | 作成日時：2022年4月28日 21時
