【忍たま】本が読みたい私のそれどころではない室町生活2

52話:瞬間、心、重ねて ページ5

学園長先生の庵を辞した私は、ヘムヘムに呼び止められた。



「ヘム！」

「えーっと……？」



……まずい。ヘムヘム語がわからない。



一生懸命ジェスチャーして私に何か伝えようとしてくれているのだけれど、なかなか通じない。

私に理解能力がないからだというのか。



「うん？ 仕事しろってこと？」



何かを書いたり箒で床を掃いたりするフリを始めたヘムヘムに、私は首を傾げる。



「いやでも私、事務室の場所知らないし……」



小さくそう呟いた私に、ヘムヘムがパッと顔を上げる。

ついて来いと言わんばかりに袴の裾を引っ張るヘムヘムに、私はポンと手を打った。



「ひょっとして、案内してくれようとしてるの？」

「ヘムゥッ」



私の言葉に、ヘムヘムが嬉しそうに頷く。

私とヘムヘムの心が一つになった瞬間だった。



「ありがとう、助かるよ。荷物を取りに行かないといけないから、一度部屋に寄ってもいいかな？」

「ヘム」



もちろんだ、と深く頷くヘムヘムに、私はへにゃりと笑う。


なんだろう。

私、結構この子好きかもしれない。

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