84話:迷い癖 ページ38
「それで、どこの委員会に行けばいいんですか?」
ほんわか笑顔をキープしたまま、不破さんがそう尋ねてくる。
「えーっとですね……」
口で言うより実際に見てもらった方が早いだろう、と私はまだ渡せていない委員会への書類を取り出した。
「こちらです」
「作法、用具、学級、体育、生物、火薬ですか……」
はい、と見せると、不破さんはぶつぶつと何かを呟きながら考え始める。
ずいぶんと深く悩んでいるな、と思っていたら、終いには「うーん」と唸りながら頭を抱え込んでしまった。
「えっ、あ、あの、そんなに悩むことですか?」
「すみません、迷い癖が出てしまって……。どこがいいとかありますか?」
……迷い癖とは。
なかなかのパワーワードに私は目をまたたく。
癖ということは、普段からこんなに迷っているのだろうか。
食堂のメニューを選ぶのに何分もかけている不破さんを何故か想像してしまい、思わずふふっと笑みが漏れる。
「Aさん?」
「あ、すみません。どこの委員会がいいか、でしたよね。うーん、皆さんのことを存じ上げないので何とも……」
さっきまでだって、ほぼ行き当たりばったりで回っていたのだ。
どこがいいかなんてわからない。
……でも、それじゃまずいんだよね。
今の不破さんを見てしまっては、彼に決めてくださいと言うことはできない。
決まる前に日が暮れてしまいそうだ。
「じゃあ、ここから近いところで、できるだけ建物の中で活動している委員会ってありますか?」
「建物の中ですか? でしたら、作法委員会ですね。こっちです」
ホッとしたように笑顔で言った不破さんが、前方を指差して歩きだす。
……作法委員会──仙蔵さんのところか。ならまだ気が楽だね。
知っている人、しかも味方でいてくれそうな人がいるところというのは、ずいぶんと気が楽なものである。
少し先でこちらを振り返って待っている不破さんを、私は早足で追いかけた。
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わそ姉大好きリスナー - Ahoy 学校行きたくねェェェェェェ 続編に出航〜♪ (2023年1月25日 9時) (レス) id: 888b3d648c (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!忍たまって鬼滅並みに難読苗字多いですよね笑。尼子先生の出身地の尼崎の地名から取っているそうなのですけれど、私も最初は漢字と読みがなかなか一致しなくて困りました。食満は初見じゃ絶対に読めないと断言できますよね! (2022年8月12日 19時) (レス) id: 23eb6548af (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - マジで夢主ちゃんに同感です。食満って名字、最初は「しょくまん」って読んでしまいますよね。私もアニメで聞くまでしょくまんだと思ってました! (2022年8月12日 19時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年4月28日 21時