【忍たま】本が読みたい私のそれどころではない室町生活2

79話:人を傷つけるということ ページ33

「それはどういうことでしょう？」

「そのままの意味ですよ。保健委員会といい貴方達といい、どこに行っても上級生が下級生の顔色を伺ってばかりじゃないですか」

「それは……っ」



何かを言いかけ、悔しそうに下を向く。

そんな五年生を見てハァッとあからさまに溜息を吐いた私に、彼は小さな声で呟いた。



「……これ以上、傷つけたくないんです」

「貴方自身が傷ついてしまうことが怖いだけなんじゃなくて？」



正直、言いすぎかなとは思っている。

十四歳の子を相手に大人げないかなとも思う。


でも本当にこの空気は何とかしてほしいのだ。

これでは本を楽しむどころじゃない。


「中在家さんもです。私の本の修復を申し出てくださったこと、大変感謝しております。ですが、初対面の怪しい女にそのような施しができるのでしたら、大切な後輩に対してどうするべきなのか、本当はわかっているのではないでしょうか。それなのに何故、きちんと真正面から向き合わないのですか？」



だらんと下ろされた中在家さんの手が、小刻みに震えている。

俯いていた五年生が、いつの間にかまたこちらをじっと見ていた。



「本は読みたいです。読みたくてたまりません。ですから、仕事が終わればもう一度こちらに参ります。それまでに、自分がどうするべきなのか、しっかり考えて行動してくださっていると幸いです」



「では、失礼します」と私は頭を下げ、図書室の障子に手をかける。


今度は、引き止める声はなかった。

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