-7年 食堂 5 ページ9
「Aさんってさ、松田達と仲良いの?」
「うん。陣平君と研二君とは幼馴染だから」
小さい頃からなんだかんだでずっと一緒にやって来ちゃったんだよね、と言うと、こくりとひと口水を飲んだ諸伏君が「そう、なんだ」と小さく呟く。
「……Aさんも、ゼロのこと気になってる?」
少し気まずい間があって、それから恐る恐る投げられた質問に、私は目を瞬いた。
何か話題を、と開きかけていた口をそっと閉じて、問いの意図を探ろうと彼の目を見つめる。
「どうして?」
見つめて、見つめて、結局出たのはそんな疑問の言葉だった。
半月もの間ひたすら諸伏君だけを見てきた自覚があるだけに、その本人から別の人狙いだと思われているなどとは考えてもみなかったのだ。
「入校式の日、Aさんずっとゼロの方見てたでしょ? だから、どうなんだろうって思ったんだ」
質問に質問で返したことを怒りもせずに「変なこと聞いてごめんね」と謝る諸伏君に、私はブンブンと首を振る。
確かにあの日のあれだけ見れば、私は降谷君に一目惚れした人になってしまう。
大事な友人に懸想しているかもしれない女など、警戒されて当然だろう。
これは一刻も早く誤解を解かなければなるまい、と張り切って口を開こうとした私に、諸伏君は眉尻を下げてぽりぽりと頬を掻いた。
「オレ、Aさんとはちゃんと仲良くなりたいなって思ってるからさ」
少しバツが悪そうにあははと笑って諸伏君が言う。
それを聞いて、どうして彼がこんなことを聞いたのかようやく合点がいった。
「──私があの時降谷君を見てたのは、陣平君や研二君に負けないくらい顔が整っている人を久しぶりに見て、びっくりしたから。綺麗な人だなとは思ったけど、一目惚れとかではないよ」
「そ、そうだよな」
失礼なこと聞いたよな、と再度謝ろうとする諸伏君を片手で制して、いいの、と私は首を振る。
「私も諸伏君とは仲良くなりたい。でもそれは降谷君がどうとかじゃなくて、諸伏君が諸伏君だから仲良くなりたいって思ったんだよ」
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真白(プロフ) - シンヤさん» わ〜!ありがとうございます!デートシーンを書くのに時間がかかっているせいで更新亀さんですが、良ければこれからもよろしくお願いします! (11月15日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています🥰 (11月15日 0時) (レス) @page12 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2023年9月13日 17時