-7年 食堂 1 ページ5
「──なぁ」
そんなこんなで、警察学校に入校してから半月。
私は昼の食堂で一人、素うどんを食べていた。
「おい、A」
勘違いしないでほしいので先に言っておくけれど、私は別にぼっちではない。
同じ教場に女子が少ないのもあって、友達はすぐにできた。
母数が足りないから百人も作ることはできないけれど、その分仲間意識は強く、深い絆で結ばれていると言えるだろう。
時間と気力さえあれば、きっと富士山の山頂で一緒におにぎりを食べてくれるはずだ。
「おいこら、聞いてんのか?」
話が逸れた。
そんな私が何故一人で昼食を摂っているかというと、彼女達が皆、教官に呼び出しを受けたためである。
どんな内容の呼び出しなのかは聞いていない。
聞いたところで気まずくなるだけだし、次に私が呼び出しを食らった時に聞かれても困るし。
「聞いてねぇならお前のかまぼこ食うぞ」
ただ、昨日の夜から妙にそわそわしていた彼女達が昼休み開始直後に突然「あ、やだー。私そういえば教官に呼び出されてたんだったー」「そういえば私もー」「そういうわけだからごめんね、A。今日は一人で食べててー」などというクッソ棒読みな茶番を繰り広げながら、キャッキャうふふと軽やかに去っていったことが非常に引っかかっている。
おいこら待て。
お前ら私にどんな罠を仕掛けるつもりなんだ。
「……って、え?」
「おう、やっと気づいたか。かまぼこもう食っちまったからな」
いきなり目の前の丼からピンクと白のコントラストが綺麗なかまぼこが消え失せて、私はバッと顔を上げる。
「ああっ! 私のかまぼこ!」
お前食べやがったな、と向かいの椅子にもたれかかってこちらを見下ろす陣平君を睨みつけると、窃盗犯はフイ、と視線を逸らした。
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真白(プロフ) - シンヤさん» わ〜!ありがとうございます!デートシーンを書くのに時間がかかっているせいで更新亀さんですが、良ければこれからもよろしくお願いします! (11月15日 20時) (レス) id: f022b78e83 (このIDを非表示/違反報告)
シンヤ(プロフ) - 続きとても楽しみにしています🥰 (11月15日 0時) (レス) @page12 id: 42d6be6a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2023年9月13日 17時