だって好きだったんだもの ページ36
「私、そんなに変わってないの? 前とは似ても似つかない見た目してると思うんだけど」
今の私はどう頑張っても前の私とは別人にしか見えない。
元々構成する遺伝子が違うのだから当然なのだけれど、捜査一課全員が納得するそっくり度とはどういうことなのか。
「そりゃ、見た目は全然違うぞ? ただ、言動がちっとも変わってねぇんだよ。自覚はねぇだろうけど癖も多いしな」
「癖?」
「お前、俺と歩く時にチラチラこっち見てるだろ」
何故バレているのか。
驚愕の表情を浮かべた私に、陣平がポンポンと頭を叩く。
こら叩くな。
撫でろと何度も言ってるだろうに。
「そんな好意に満ちた目できっかり三秒見つめては前を向くっての繰り返してたら、嫌でも気づくっての」
顔がカッと熱くなる。
恥ずかしい。
「そんな目を、していたの? 私は」
「ああ」
「そっか。そうよね、思い出す前だって結局貴方のことが好きだったんだから」
ボトリ、と物が落ちる音がして右を見ると、陣平が自分の通勤鞄を床に落としていた。
そのくせして、肩にかけた私の鞄はしっかりと握ったまま離さないのだから笑ってしまう。
「やだ、どうしたの? らしくない」
屈んで拾い上げ、「はい」と渡そうと顔を上げると、驚きと喜びの入り混じった顔でこちらを見る真ん丸な瞳と目が合った。
「え? やだ、何? 私、何か変なこと言った?」
ぎゅっと鞄の持ち手を握りしめて、オロオロと視線を彷徨わせる。
獲物に狙いを定めた狼のようにギラギラとした彼の藍色といつまでも視線を合わせるのは私には無理だった。
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作者名:真白 | 作成日時:2023年2月5日 0時