彼の態度 ページ21
「ってよ、おい、待てよ、A!」
結局、彼が追いついてきたのは、本庁までもう残りわずかの赤信号でだった。
正確にはもう少し距離があるのだけれど、この信号は青になるまでが長いのですぐに捕まってしまうだろう。
……私だって、どうしていいのかわかんないんだよ。
せめて思い出すのがもう少し早ければ。
せめて思い出してからもう少し整理をする時間があれば。
ここに来るまでに色々と考えてみたけれど、起こってしまった事実は変わらないわけで。
はああ、と深く溜息を吐く。
「おうおう、Aサンよ。上司からの呼びかけをフル無視とはいい度胸だな」
いつの間にか後ろに迫っていた松田さんが、私の肩に片手を乗せて体重をかけてくる。
いつも通りすぎる松田さんの態度に私が目をまたたかせると、彼は「何だよ」と眉間にぎゅっと皺を寄せる。
「お前が馴れ馴れしくするなって言うからこうしてやってるんだぞ?」
「別に馴れ馴れしくするなとは言ってないですけど……」
機嫌の悪そうな声と共に肩にかかる重みが増して、私は口を尖らせる。
重い。
「ああん? なんか文句あんのか」
「ないですよ」
明らかに強がっているその態度に心の中で謝罪しつつ、私は顎まで乗せ始めた男をジトリと眺めた。
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作者名:真白 | 作成日時:2023年2月5日 0時