6話:むしろ、貶してる ページ8
「そういえば、なんですけど。一つお聞きしたいことがあるんです」
文次郎さんの肩に担がれてゆらゆら揺れながら、私は仙蔵さんの方を向いた。
「何でしょう、天女様」
相変わらずのキラキラしい笑顔でそう返事をしてくる仙蔵さんに、私はピッと人差し指を立てる。
「その『天女様』ってやつです。それって私のことですよね? そう呼んでる割に私のこと敬っている感じはしませんし、むしろ……。そもそも私のどこが天女なんですか?」
ただの本好き女子高生ですよ、と言うと、仙蔵さんは少し苦笑いをする。
「確かに貴女はこれまでの天女様とは少し違いますね」
……これまでの天女様?
私以外にも女を捕まえては天女と呼んでいるのか。
この人達は、なかなか変わった趣味嗜好をお持ちなようだ。
「僕達は、異なる時代から来た女性のことを天女様とお呼びしているんです」
黙り込んでしまった仙蔵さんに代わり、茶髪の男が顔を見せる。
「異なる時代? ってことはここは……」
「室町時代です、天女様」
室町時代。
トリップではなくタイムスリップだったということか。
まあ誘拐犯達が全員着物を着ている時点で、既に見当はついていたのだけれど。
……ってことは、現代じゃ読めないような本がたくさんあるかも!?
そう考えると少し気分が上昇してきた。
室町時代の本なんて、現代まで残っているものはほんの一部だけだ。
普通に生きていたら、私なんて一生お目にかかれないようなものである。
うふふん、と上機嫌で笑う私を、茶筅髷の男が警戒したように見ていた。
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魚月(プロフ) - 小桜さん» わかります!めちゃくちゃあるあるですね!ありがとうございます。参考にさせていただきます! (2022年3月29日 20時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 魚月さん» そうなんです! 私も本大好きなんですよ〜。私の場合は、途中まで読んだ本を栞を挟んだりするんじゃなくて、開いたまま伏せて置くのが許せません! 型が残ってしまうので。……これは結構あるあるなんじゃないかな〜って思ってます! (2022年3月28日 22時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - (続き)夢主ちゃんを究極の本好きにするため、本好きの友人達から「本好きあるある」を募って書いています。私はこうだな、というのがありましたら、ぜひ教えてくださいね! (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
魚月(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます! 夢主ちゃんと気が合いそうとは、小桜さんもなかなかの本好きですね。……実は作者もです笑。 (2022年3月28日 19時) (レス) id: cd436a6c71 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - ヤバい……夢主ちゃんの言うことめっちゃ分かる……!! この子とは気が合いそうです! とても面白く、続きが楽しみです。更新頑張って下さい! (2022年3月28日 7時) (レス) @page19 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真白 | 作成日時:2022年3月15日 9時